宮川は札幌の鮨の名店で、札幌市街からタクシーで10分程だ。
夜の2回転制で、全ての客が同じ時刻から食べ始める。
店内は凛とした白木の8人掛けのカウンター一つのみだ。
摘みと握りを合わせて全部で20品程度が供される。
全てに感想を記すのは大変なので、先ずは摘みの幾つかについて。
帆立貝の摘みは、細切りにした帆立貝に葛を使ってとろみを与えている。
雲丹の摘みは、トマトから抽出したジュレを添えている。雲丹のねっとりした食感とジュレの甘みが良く合う。和食では珍しい技法だが、ジュレの抽出方法はフランス料理を参考にしているそうだ。
駄々茶豆
鮑の摘みは、鮑自体もソースも素晴らしい。ソースは乳製品を用いているかのようなコクが有るが、鮑の肝のみ用いているそうだ。
脂の乗った鰊と水茄子を和えた摘みは、清涼感が有る。
続いて握りの幾つかに付いて。握りは全般的に細長い。シャリは硬すぎもせず柔過ぎもせず、酢の使い方も控えめで、シャリが単独で存在感を出してくるのでなく、ネタと合わせて美味しくなるようなシャリだ。
細かく包丁を入れた烏賊の握りは、適度な弾力感がありながら、食べ易い。
鯛の握りは、脂の乗り方も弾力感も良い。
鮪の握りは、醤油に漬けており、熟成させたような深みの有る味だ。
トロ
小肌の握りは、余り酢を感じさせず、円やかな味わいだ。
鯵の握りは、脂の乗り方が素晴らしい。
車海老
摘みに出てきた雲丹が、今度は握りとしても供される。この握りが独特で、シャリに鶏の卵の白身を掛けて、とろみを付けている。卵掛けご飯に雲丹を載せたような品だが、とろりとした食感が見事だ。
鰹節でなく魚の骨から出汁を取ったという味噌汁は、力強い味わいだ。
追加で頼んだ時不知(ときしらず)は、柔らかくかつ脂が乗っている。
締めの玉子は、魚も練り込んだハンペン風。
全ての摘みと握りが高い水準にある。
ご主人や他の職人達も、穏やかな人柄で話し易い。
10/10