3回目の訪問。
Asahina Gastronome(アサヒナ ガストロノーム)は東京証券取引所の直ぐ側という意外な立地だが、取引所が重厚な石造りのため、この辺りは落ち着いた雰囲気が漂っている。
店内の基調色は銀色と灰色と白で、同系色かつ階調が付いており、壁の所々に埋め込まれた鏡がアクセントとなっている。上品さの中に華やかさがある出色の内装だ。
立体的な盛り付けのアミューズ ブーシュからコースは始まる。ブーダン ノワールのタルトは、濃厚ながら洗練された味わい。ビーツのメレンゲは軽い食感。
最初の冷前菜は、トラウト サーモンを煮凝りの中に閉じ込めて、その横にモッツェレラを添えている。見た目が美しく、ナイフを入れるのを躊躇してしまう。味ももちろん美味。
二つ目の冷前菜は、ブルターニュ地方の菓子みたいな品を、甘さを抜いて食事にしている。ジャガイモはポテト チップスみたいな奇妙な食感。この皿は理解するのが難しかった。
温前菜の牡蠣は、ミルキーで微かな酸味を湛えたソースが見事。
魚は舌平目のムニエル。食べられないが骨までもデザインに組み込んでいる。出汁から取ったソースが、とても良い。付け合わせの春野菜は、色鮮やかで爽やかな味。
黒毛和牛は、素材も火入れも見事。付け合わせは黒胡麻を練り込んだ筍で、この店としては珍しく和食の素材を使っている。二種類のソースも美味。
肉を食べている間に、木の子味のスープをサイフォンで淹れてくれる。こういう演出も楽しい。
デセールの一皿目は冷製のライチ。液体窒素を使った桜が季節を感じさせる。
デセールの二皿目は、キャラメリゼした紅玉とショコラ。ショコラは適度に濃厚。
食後の飲み物は、フレッシュ ハーブ ティーにした。目の前でサイフォンで淹れてくれるのが楽しい。
惰性で食べがちなミニャルディーズも、一つ一つの質が高い。
接客は客との間に適度な距離を置きながらも、客への目配りが的確。高級店らしい洗練された接客だ。
料理は見た目が美しく、食べる前に見入ってしまう。調理法や味付けは古典に基づきながら、現代的な感性も併せ持っている。
素晴らしい店だと思う。
9/10
ASAHINA Gastronome – アサヒナガストロノーム – 日本橋兜町、朝比奈 悟によるガストロノミー。 フランス料理における「伝統の継承と現代の革新」是非ご堪能ください。