Asahina Gastronome | アサヒナ ガストロノーム

4回目の訪問。

Asahina Gastronome (アサヒナ ガストロノーム)は東京証券取引所の直ぐ側という意外な立地だが、取引所が重厚な石造りのため、この辺りは落ち着いた雰囲気が漂っている。

店内の基調色は銀色と灰色と白で、同系色かつ階調が付いており、壁の所々に埋め込まれた鏡がアクセントとなっている。上品さの中に華やかさがある出色の内装だ。低音量のジャズがBGMとして流れている。

男性客の多くはジャケットにノー タイ。僕はスーツにネクタイで臨んだが、ノー タイでも問題はなさそうだ。Tシャツみたいな極端にカジュアルな服装は不適切だ。

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この日はMENU Vessieという特別コースを頼んだ。主菜は鶏を豚の膀胱(Vessie)の中で蒸し焼きにした古典的な料理だ。膀胱自体は食べないし、もちろん綺麗に洗っている。豚コレラの影響で供給が不安定になったので、しばらく供していなかったが、久しぶりに復活したそうだ。と言っても、供給が完全に安定してはいないみたいで、このコースは常に提供している訳ではなさそうだ。このコースは通常コースに比べて品数が少ないが、主菜の分量が極めて多いので、コース全体の分量はかなりのものだ。
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立体的な盛り付けのアミューズ ブーシュからコースは始まる。ビーツのメレンゲは軽い食感。丁寧に漉したジャガイモをパイ生地に乗せた品も、食感が良い。

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オマール ブルーは見事だった。先ずは盛り付けが美しい。しばし眺めてからナイフを入れる。オマール ブルーは、素材も火入れも素晴らしく、いったん半生に火を入れてから冷製にしている。上質なホワイト アスパラガスを軽く茹でて、立てている。滑らかで甲殻類の滋味溢れるソース。キャビアでアクセントを付けている。

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魚は舌平目のムニエル。食べられないが骨までもデザインに組み込んでいる。出汁とシャンパーニュから取ったソースが、とても良い。玉葱のファルシは、中にベーコンを詰めて味に変化を付け、芸が細かい。

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お待ちかねの若鶏のヴェッシー包み。給仕が客の目の前で、膨れ上がった豚の膀胱を切り裂き、中の鶏肉を切り分ける。この様は視覚的にも楽しい。鶏肉は柔らかさと弾力が両立しており、かつ、鶏肉に有りがちな繊維感が殆ど無い。トリュフが鶏肉の中に詰められていると共に、削って上からも振り掛けられており、良く香っている。胸肉以外の部位をスープにしたり、サラダに入れたりと、複数の調理法で提供される。約1.8kgの鶏を二人で分けるので、胃袋の限界が試される。

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アヴァン デセールのブラッド オレンジは、爽やかな酸味。ソルベの冷たさが、口直しに良い。

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レモンやシトロンのタルトは、上品な口当たりで、これも程よい酸味が味を引き締めている。

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食後の飲み物は、フレッシュ ハーブ ティーにした。目の前でサイフォンで淹れてくれるのが楽しい。

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惰性で食べがちなミニャルディーズも、一つ一つの質が高い。

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接客は客との間に適度な距離を置きながらも、客への目配りが的確。高級店らしい洗練された接客だ。

料理は見た目が美しく、食べる前に見入ってしまう。調理法や味付けは古典に基づきながら、現代的な感性も併せ持っている。

素晴らしい店だと思う。

10/10

ASAHINA Gastronome – アサヒナガストロノーム – 日本橋兜町、朝比奈 悟によるガストロノミー。 フランス料理における「伝統の継承と現代の革新」是非ご堪能ください。