ノーカントリー

Ethan Coen & Joel Coen, No Country for Old Men 『ノーカントリー』(2007)

前半の映像は素晴らしい。青い空と、どこまでも続くテクサスの荒野。そこに横たわる死体群。それらを切り取る構図が念入りに考えられており、この映画は傑作という予感を抱く。

ギャングの撃ち合いの現場で偶然にも大金を拾ったルゥエイン モス(ジョシュ ブロリン)を、殺し屋のアントン シガー(ジャヴィエ バルデム)が追いかける。いかつい体躯におかっぱ髪というバルデムには、異様な存在感がある。

モスを助けようとする保安官(トミー リー ジョーンズ)に焦点が当たる後半になると、この映画は変調を来す。犯罪への無力感をつぶやく保安官の姿を描く最後の場面は、腑に落ちない。複数の題材や登場人物を、監督はまとめ上げることができなかったようだ。前半が素晴らしかっただけに残念。

★★★・・

(WOWOWで録画)