2年振り2回目の訪問。
l'élan(エラン)は、高級感に溢れ、古典を踏まえながらも現代的な料理を楽しめるフランス料理店だ。2年前の初訪問の時に比べて、更に料理が進化していた。
場所は原宿の近く。照明は暗めで、内装も暗色で落ち着いた雰囲気がある。見晴らしが良く、渋谷の高層建築を眺められる。同じフロアに系列のビストロが有り、それと厨房を共用している。コースにペアリングを合わせた。
「アンチガスピヤージュ グジェール フォアグラ さより」
アミューズ ブーシュとして幾つかの品が供される。コンテ チーズのグジュールは、しっとりとした食感。鳥から出汁を取ったスープは滋味溢れる味わい。サヨリに乳製品を併せた品は、滑らかな食感で、添えた豆が味にアクセントを加えている。フォアグラと生のマッシュルームの組み合わせも良い。
「赤貝/フクユタカ」
筍と赤貝は、上品な食感。
最近の店にしては珍しく、パンも店で焼いているそうだが、このバゲットは出色だった。合わせるオリーブ油は、とても濃厚で旨味が有る。
「高農園 うえのはらハーブガーデン 藏光農園」
続く皿は、一言で言えば野菜のサラダだが、これはとても手が掛かっている。多くの素材が盛り込まれているが、それぞれに微妙に異なる調理が施されており、複雑な味わいが生まれている。
ロワールのアスパラガス(日本産はまだ季節が早い)は、素材が良く、多少硬めに茹でている。スミイカとの意表を突く組み合わせも効果的。
「リードヴォー トルテリーニ モリーユ ヴァンジョンヌ」
リードヴォー(胸腺)は粗野と上品さのギリギリの境を狙った品で、モリーユ茸との組み合わせが複雑な食感を生み出している。ヴァンジョンヌというワインのソースも見事。
「甘鯛 セロリラブ トマト スープドポワソン」
甘鯛の鱗焼きは、鱗が微かに焦げた出色の焼き方。乾燥したトマトには驚いた。旨みが凝縮されており、かつ甘味も有る。様々な魚から取ったスープは深い味わい。
「ベットラーブ 塩釜 デュッカスパイス」
塩釜焼きにしたビーツを、スパイスに付けて食べる。単純そうだが、手間の掛かる調理で、燻製香が効果的。
「太刀魚 加賀レンコン フヌイユ」
太刀魚の焼き方自体は和食みたいな感じだが、ソースでフランス料理に着地している。
「七谷鴨 パネ ジュ」
シンプルだが見事な焼き方。ソースや野菜の付け合わせも良い。
「フロマージュ」
最近の店にしては珍しく、フロマージュが(オプションでなく)コースに組み込まれている。種類が多く、質もとても良かった。
「せとか ヨーグルト ローズマリー」
口直し的な位置付けの品。柑橘系の酸味をヨーグルトが円やかにしている。
「コスモポリタン」
その場でソムリエがシェークしてカクテルを作るという演出が面白い。
「苺 メレンゲ バジル ソーテルヌ 柚子 ヴァニーユ」
とても凝ったデセールだ。苺を基調として、微かな酸味が味を整えている。メレンゲは儚い食感。
「マカロン ピスターシュ ガナッシュ カシス ブラリネ コロネ」
食後はハーブ ティーで締め括った。お茶菓子も水準が高い。
ソムリエ兼給仕の説明はとても丁寧。詳細な来店記録を取っているみたいで、我々が前回訪れた時のメニューに会話の中で触れることに、驚いた。
食中と最後の二回挨拶に来てくれたシェフは好青年。
各皿とも驚くほど手間が掛かっており、素材の組み合わせや調理方法が練られている。皿数と分量が極めて多いので、皿数を若干減らしても満足度は変わらないと思う。全般的に現代的でありながら、フロマージュのように老舗の名店みたいな楽しみもある。シェフの信太(しだ)竜馬氏は若干35歳。驚くべき才能だ。
9/10