ハート ロッカー

Kathryn Bigelow, The Hurt Locker (2008)

世の中には様々な趣向の持ち主が居る。平穏を好む人も多いが、ひりひりするような緊張感を愛する人も居る。本作の主人公ジェイムズ(Jeremy Renner)は、その極端な例だ。米国軍で爆弾処理を手がける彼は、いわば戦争の中毒者だ。麻薬中毒者が麻薬無しでは生きて行けないように、ジェイムズも死と隣り合わせの戦争の緊張感無しでは生きていけない。

第2次イラク戦争を舞台とした本作は、全編に渡って迫真の映像が連続する。防爆服で身を固めたジェイムズが爆弾に向かって一歩ずつ近づく時、観客はあたかも自分が爆弾に近付いているかのような感覚を覚える。

監督はイラク戦争の是非に関する判断は保留しているように見える(それが悪いと言いたいわけではない)。また、物語としての起伏には乏しい。

ラスト シーン。いったん妻子の元に帰ったジェイムズは、再び戦地に戻り、また爆弾に向かって歩みを進める。彼には妻子との日常よりも戦争が必要なのだ。

★★★★・

(WOWOWで録画)