モーターサイクル ダイアリーズ

ウォルター サレス 「モーターサイクル ダイアリーズ」

 

革命家チェ ゲバラの若き日を描いた映画を恵比寿で観た。

 

23歳のアルゼンチンの医学生エルネスト ゲバラ(Gael García Bernal)は,親友アルベルト(Rodrigo De la Serna)と共に,おんぼろのモーターサイクルで南米を縦断する旅に出る。モーターサイクルがしょっちゅう故障したり,強風や寒さや雪に見舞われたりなど,道中は平穏でない。しかしそれは,青年の貧乏旅行の典型とも言えるものだった。

 

国境を越えてチリに入った頃から,旅はその質を変える。共産主義者であるため土地を奪われた夫婦,先祖代々の土地を奪われた先住民… 社会の底辺で困窮する人々の実態を目の当たりにするにつれて,エルネストの心境に変化が現れてくる。この旅が,後の革命家を準備したのだった。

 

エルネストには,人間は皆平等であるべきだという,静かだが強い信念がある。ハンセン病患者のコロニーで,隔離されている患者と素手で握手し自由に交流する姿は,その象徴だ。しかし,この映画のエルネストには,革命家という後の称号から想像されるようなカリズマ性や強烈な個性は感じられない。この点は評価が難しい。エルネストのカリズマ性の欠如がこの映画の味わいを若干淡白なものにしているが,それは事実だったのかも知れない。このように若干もどかしさを感じてしまう部分もあるが,チェ ゲバラが革命を志すに至った理由が良く描けていて,興味深い。

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