マッチ ポイント

Woody Allen, Match Point (2005)

この映画を観た者は、理性を狂わせる愛欲の恐ろしさに身震いするとともに、運命の皮肉に感じ入ることになろう。

テニス コーチのクリス(ジョナサン リース マイヤーズ)は、テニス クラブで上流階級の男性トムと知り合い、トムの妹クロエとも恋仲となる。クリスはトムとクロエの父親の会社に入社し、順調に出世を重ね、クロエとも結婚する。一見順調そのものの生活の影で、クリスはトムの婚約者ノラ(スカーレット ヨハンソン)との不倫の深みにはまりこんでいた。ノラが妊娠し絶体絶命のクリスの運命を決めたのは、小さな運不運だった。あたかも、テニスにおいて、ネットに当たったボールがコートのどちらに落ちるかが、試合を決することがあるかのように…

クリスの順風満帆な表の生活と、抑えきれない愛欲の裏の生活を、二本の糸を縒り合わせるように描くウディ アレンの演出が見事だ。不倫が抜き差しならない状態になっていくにつれて、映画は緊迫の度合いを増していく。そして、クリスの運命が決まる最後の場面。アレンのメッセージはシニカル過ぎるかもしれないが、しかしそれも真実の一面なのだろう。

官能が匂い立つようなスカーレット ヨハンソンは若干演技過剰な感じもするが(もう少し演技を抑えても十分官能的だ)、ヨハンソンの虜になっていくのを抑えられないリース マイヤーズの演技は秀逸。

★★★★★

 (恵比寿ガーデンプレイスにて)