全米オープンのロジャー フェデラー

圧倒的な強さだ、ロジャー フェデラー。惜しくも年間グランド スラムこそは逃したものの、4大大会全ての決勝に進出し3勝するとは、素晴らしい充実振りだ。

フェデラーのグラウンド ストロークは強力だが、アガシナダルには打ち勝てないだろう。サーブも速く正確だが、サンプラス程の破壊力は無い。ネット プレーも巧いが、エドベリの神業に比べると人間の領域にいる。このように、個々のショットをとるとフェデラーは史上最高ではないが、その総合力は史上最高だろう。

また、フェデラーの大きな長所として、「崩れない」ことと「流れを引き寄せるのが巧い」ということが挙げられる。全米オープン決勝のロディック戦でも、中盤は全く互角であり、むしろロディックに勢いがあった。しかし、第3セットの最後にロディックが突然崩れたのを巧く捕らえて、流れを完全に自分に引き寄せてしまった。ウィンブルドンの決勝でも、ナダルは全く互角だったが、気がついたらフェデラーに流れが来ていた。

残るはロラン ギャロス(全仏)のタイトルだ。これを得るにはナダルを倒さなければならないので、ハードルは高い。しかし、今年の決勝でも序盤は圧倒していたので、もう一息でナダルにも勝てるだろう。もちろん、その「もう一息」が大変なのだが...

ところで、今年の全米オープンでは、微妙な判定をビデオで再確認するシステムが導入された。審判の権威を絶対視する人はこのようなシステムに反対するだろうが、僕はとても良いと思う。現在のスピード テニスの時代では、審判の肉眼の判断にも限界がある。ビデオ判定システムは味気ないかもしれないが、際どい場面で判定が勝負を左右する後味の悪さを無くすことができる。