フェデラーが遂に復活!

2017年の全豪オープンは劇的な結末を迎えた。ロジェー フェデラーがラファエル ナダルをフル セットで下し、全豪5回目、グランド スラム18回目の優勝を成し遂げた。

今年は第1シートのアンディ マレイと第2シードのノヴァク ジョコヴィッチが早いラウンドで敗退した。波乱だという声も聞かれるが、僕はそうは思わない。

ジョコヴィッチは去年のローラン ギャロスで優勝して生涯グランド スラムを達成してから、闘争心が薄れてしまった。ジョコヴィッチは過去3年間ボリス ベッカーをコーチに付け、素晴らしい成果を上げてきたが、去年の末にコーチ契約を解消してしまった。ベッカーはメディアに対し、ジョコヴィッチの練習量が落ちていると語っている。また最近はジョコヴィッチが宗教に嵌っているとも言われている。ジョコヴィッチが洗脳状態にあるのかどうか判らないが、以前のように闘争心を持ち厳しい練習を積まなければ、再びグランド スラムで優勝したり1位に返り咲くのは難しいだろう。

去年後半のマレイは驚異的な活躍を見せたが、あの調子はさすがに続かない。悲願の1位になり、若干テンションが下がるのも無理はない。

ジョコヴィッチとマレイの早期敗退は不思議ではないが、彼らに代わって決勝に進んだのが、35歳のフェデラーと30歳のナダルだったというのは、嬉しい驚きだ。フェデラーは膝の手術のリハビリテーションで去年後半は約半年ツアーを欠場した。ナダルも手首の故障などに悩まされ、去年の末は休養を取っている。

大会前にフェデラーナダルが優勝候補だと予測していた人は殆ど居なかっただろう。フェデラー ファンの僕も期待を抑えるようにしていた。

しかし大会半ばから二人の調子は徐々に上がっていった。フェデラーは3回戦でトマス ベルディヒに対し完璧なプレイを見せ、この時から僕も「優勝できるかもしれない」と思い出した。4回戦では錦織圭をフル セットで下し、準決勝でもかなり危なかったがスタン バブリンカにまたもやフル セットで競り勝った。

一方のナダルは、4回戦で若手の有望株のアレクサンダー ズヴェレヴに先行されながらもフル セットで競り勝ち、準々決勝で3位のミロス ラオニッチをストレイトで下した。グリゴー ディミトロフとの準決勝は5時間近い白熱した試合だった。この試合は何度も流れが変わり、ディミトロフもナダルに対してほぼ互角に打ち合った。しかし、第5セットで先にディミトロフが0-30のチャンスを得ながらもブレイクできず、続いてナダルが0-30のチャンスからブレイクし勝負を決めた。勝負所での強さは、さすがナダルだ。

そして迎えた決勝は、歴史に残る名勝負だった。この試合はほぼ1セット毎に流れが変わり、第1セットから第4セットまで、フェデラーナダルが交互に取っていった。このパターンが崩れかけたのが第5セットの序盤で、第4セットを取ったナダルがそのまま第5セット最初のフェデラーのサーヴをブレイクした。何度か有ったブレイク バックの機会をフェデラーが逃し、このままナダルが優勝しそうな状況になってからのフェデラーの巻き返しが見事だった。スーパー ショットを連発し、ナダルのサーヴを2回ブレイクする。最後はフェデラーのフォアハンドのインの判定にナダルがチャレンジしたが、ヴィデオの再生で判定が確定し、フェデラー歓喜の雄たけびを上げる。

ナダルストロークは全盛期並みの威力だったし、ナダルフェデラーのバックハンドを狙うのも、いつものことだ。しかし、この試合はフェデラーのバック ハンド ストロークが安定していたし、バック ハンド リターンも良かった。この二人が対戦すると、フェデラーのバック側に来るナダルのスライス サーヴを、フェデラーが弱々しいスライスで返し、そこからナダルストロークで主導権を握ることが多い。しかし、この決勝では、フェデラーはスライス リターンをほとんど使わず、バック ハンドのリターンをフラットで返す意識が徹底していた。思い返せば、両者が最後に対戦しフェデラーが勝った2015年バーゼルの決勝でもそうだった。この対戦に備えて、フェデラーはバック ハンド リターンを入念に練習してきたのだろう。フェデラーナダルを苦手としてきたが、勝ち方が見えたのではないだろうか。

この優勝で、フェデラーのグランド スラムの優勝回数は18となり、自身の記録を更新した。

Rank

Player

Total

1

 Roger Federer

18

2

 Pete Sampras

14

 Rafael Nadal

14

4

 Roy Emerson

12

 Novak Djokovic

12

6

 Rod Laver

11

 Björn Borg

11

8

 Bill Tilden

10

 (Wikipediaより引用)

 

フェデラーのグランド スラム優勝は、2012年ウィンブルドン以来となり、なんと約4年半振りだ。こんなに長い間グランド スラムで優勝できなくても、前向きな気持ちを保ち続けたフェデラーに感銘を受ける。ファンとしての願望も込めて言うなら、今年フェデラーはグランド スラムで複数回優勝し、1位に返り咲くと思う。ナダルも復調してきた。これからもフェデラーナダルの名勝負が見られるだろう。