北のカナリアたち

阪本順治 北のカナリアたち(2012)


かつて北海道の離島で小学校教員を勤め、その後図書館の司書として働いていた川島はる(吉永小百合)。定年退職した彼女が、かつての教え子が起こした殺人事件の真相を突き止めるべく離島に足を運び、教え子達と再会する。


教え子達が語ったのは、20年前の離島の海で川島はるの夫(柴田恭兵)が溺れ死んだ事件の真相だ。この事件そのものは、当時の関係者の誰もが知っているが、その原因や背景について、各人の認識が少しずつ異なる。そして何人かは、溺死事件の切っ掛けを作ったのは自分だと思い、その後罪の意識に苛まれてきた。


一つの事件の真相を複数の人の視点から語るというのは、よく有る手法だが、本作のそれはとてもスリリングだ。小学生達を単に純朴な存在として扱わずに、嫉妬や苛めという複雑な問題を導入し、更には一見聖人君子の川島はるの抱えていた問題も描くことにより、本作のストーリーは重層的なものとなっている。


本作の映像も特筆すべきものだ。吹雪の吹き付ける離島の荒涼とした様、束の間の夏の穏やかな海。色調、構図ともに考え抜かれた画像が続く。

 

本作は様々な伏線が複雑に絡み合うが、話の繋がりに辻褄が合わない部分も有る。また、最後の方でかつての教師と生徒達が再び音楽の授業を行なう場面。全体的に暗い話が続く本作の中に、多少心温まる場面を監督は挿入したかったのかもしれないが、ここは若干違和感を覚えた。

 

と、気になる点もあるが、全体的に見れば良くできた佳作だと思う。

★★★★・