フリーソロ

Jimmy Chin, Elizabeth Chai Vasarhelyi, Free Solo (2018)

驚くべき快挙だ。アレックスが最後の難所を登り切った時、僕はアレックスの偉業に畏怖すると共に、深い安堵に包まれ、殆ど泣きそうになってしまった。

フリー ソロというのは、単独で命綱も使わずに行なうロック クライミングだ。このドキュメンタリーは、Alex Honnold(本人自身が出演)というフリー ソリストに密着する。妻や知人達の、そしてアレックス自身の言葉から、寡黙で意志の強いアレックスの人柄が伝わってくる。アレックスは、8年越しの夢を叶えるべく、今まで誰もフリー ソロで登ったことのないヨセミテEl Capitanに挑戦する。命綱を使う練習のクライミングでも、その難しさは十分に伝わってくる。命綱無しで登れば、僅かな失敗は、即死を意味する。

El Capitanはアレックスの人生の中でも最高に難しい岩山だ。実際に一度フリー ソロで挑むが、途中の難所で危険を感じ、断念してしまう。数か月後に再度El Capitanに挑むアレックス。登頂後の述懐によれば、この時のアレックスの心境は前回とは異なり、とても冷静かつ自信に溢れているようだった。前回断念した難所も上手く切り抜ける。製作者達は、麓からの望遠と、恐らくドローンによる接近の両方でアレックスを撮影する(本作がドローンの無い時代に撮影されていたら、作品の魅力は半減していただろう)。接近した動画で、一見平面に見える岩場の僅かな凹凸を捉えながら登っていくアレックスの様子を見ると、観客の心臓も激しく鼓動してしまう。

遂にEl Capitanを登り切ったアレックス。しばし感慨に浸った彼は、休むことなく、その日の午後には練習を再開する…

★★★★★