華氏9/11

マイケル ムーア 「華氏9/11」

昨日(9月11日)に「華氏9/11」を恵比寿ガーデン プレイスの映画館で観た。映画自体もかなり話題となっているし,9月11日テロの3周年だったせいかもしれないが,映画は大変な人気で,開始45分前に行ったらほぼ定員近くまで券が売れていた。

 

映画は先ず2000年大統領選挙の描写で開け,歴史的な接戦の過程でブッシュ側に有利な不正が行なわれたと述べる。その後,9/11テロの際には,ブッシュ政権は事前の警告情報を無視し,かつテロ後の対応も迅速さを欠く。政治家になる前に石油ビジネスで完全に失敗したブッシュは,実はサウジ アラビア王家やビンラディン一族とも深いつながりを持っていた。映画は後半,イラク戦争の惨状や,米国の中でも失業率の高い地域の若者の働き口が軍隊位しかない状況や,ブッシュ政権が国民の間に危機感をあおっている現状を描き,ブッシュの石油利権のために下層階級の若者が戦争に駆り立てられていると告発する。

 

ムーアはブッシュに対して強い憤りを感じており,2004年大統領選挙でブッシュの再選を阻みたいという強い意志が伝わってくる。この映画は若干勇み足な部分もある。2000年大統領選挙で不正が行なわれたことを示唆する事実が描かれているが,本当に証拠があるのか?ビンラディン一族から出資を得ているブッシュの知人がブッシュの石油会社の1.25%(400万ドルの資本金のうち5万ドル)を所有していたからといって,ブッシュがビンラディン一族と深くつながっていると言って良いのか?また,イラク戦争の際の多国籍軍(Coalition of the Willing)にパラオやコスタ リカやアイスランドといった弱小国が含まれていたと揶揄するのは,どうでもいい揚げ足取りに過ぎない。このように一部公正さを欠く部分はあるが,全体としては,丹念な取材と優れた構成により説得力のあるものとなっている。映画の性格上,数年後に見直しても面白くないかもしれないが,2004年大統領選挙の直前に観る価値は十分ある。

★★★★・