第三の男

Carol Reed, The Third Man 第三の男(1949)

 

家の近所の本屋で、過去の映画の名作DVDシリーズを500円で売っていたので、思わず「第三の男」を買ってしまった。古典として有名な映画だが、観るのは初めてだ。

 

第二次世界大戦直後のウィーンに、アメリカ人三文小説家のホーリー マーティンズ(Joseph Cotten)が友人のハリー ライム(Orson Welles)を訪ねてくる。マーティンズが到着する直前に、ライムは交通事故で死んでしまう。ライムの死因に不審を覚えたマーティンズは、ライムの恋人アンナ(Alida Valli)と真相を探るうちに、思わぬ事実を知る…

 

サスペンスの古典と言われる映画だが、現代の水準からすると、刺激はそれほど強くない。しかし、この映画は、単なるハラハラ ドキドキものではない。マーティンズのライムに対する友情は、ライムの悪行を知るに及んでぐらついて行く。また、残されたアンナに対し、マーティンズは少しずつ恋愛感情を抱いてゆく。これらの複数の要素がサスペンスに溶け込むことによって、この映画は複雑な滋味を得るのだ。

 

白黒の映像は、ウィーンの光と影を、印象的に映し出す。時を超えて現代でも通用する映画だと思うが、不満があるとすれば、Wellesと並ぶもう一人の主役のCottenだ。正義感に燃えて、危険を顧みずに友人の死因を調べたり、その知人の恋人を愛してしまったりなど、ハードボイルド的な役回りなのだが、薄っぺらな感じで印象に残らない。

★★★★・