シン シティ

ロバート ロドリゲス「シン シティ」

有楽町で映画「シン シティ」を観た。

 

夜の摩天楼のバルコニー。イヴニング ドレスを纏ったクールな美女。画面全体はモノクロームなのに,女のドレスと口紅だけが紅い。若い男が女を口説き始めたと思った瞬間,男は女を射殺する。モノクロームの画面の中で,崩れ落ちた女から流れ出る血だけが紅い…

 

このスタイリッシュな出だしに,シン シティという映画の魅力が凝縮されている。ストーリーの構造としては,権力や警察が腐敗した街シン シティで愛する女性を守るべく戦う3人の男を描いた,相互に関連しつつも独立した3話がこの映画を構成する。しかし,しばしばご都合主義的で,タランティーノ的なドタバタ騒ぎ(実際にクウェンティン タランティーノが一部の共同監督を勤めている)に陥るストーリーは,この映画にとっては二次的なものだ。

 

この映画の魅力は,そのスタイリッシュな映像美にある。シャープで解像度の高いモノクロームの画面に,口紅の赤や瞳の青だけが色を添える映像は忘れがたい。僕の苦手な残酷な描写が多々あるために心底からは楽しめなかったが,監督のロドリゲスには同様にスタイリッシュな(しかし残酷度の低い)作品を作ってもらいたいと思った。

★★★★・