人は誰でもいつかは死ぬが、死に関する職業は得てして不浄なものとして蔑まれる。心を込めて死者を納棺する青年を描いたこの作品は、そんな偏見を打ち砕く。
小林大悟(本木雅弘)は駆け出しのチェロ奏者だったが、経営に行き詰まった楽団の解散に伴い失職する。妻(広末涼子)と共に故郷に戻った小林は、仕事の内容を知らないまま新聞の求人広告に応募して、納棺師になってしまう。納棺師を汚らわしい職業と見なす妻や友人になじられ、一時は仕事を辞める気になった小林だが、社長の体験を聞いたり場数をこなしたりしていく内に、仕事を続ける決意を固める…
本木雅弘が故人を納棺する場面。遺体を拭き浄め、死に化粧を施す所作は、気品ある美しさを湛える。丁寧で正確な仕事振りと、その奥にある真心が、夫が納棺師になったことを恥じていた妻の－そして見る者の－心をも打つ。本木の演技が素晴らしい。納棺師という仕事に敬意を抱いているのが伝わってくる。幼い頃に自分を捨てた父を納棺する本木が涙を流すのを見て、自分も思わず落涙してしまった。
★★★★・
(WOWOWで録画)
