たすきがけの湯布院

玉の湯と並び称される亀の井別荘。その先代経営者である中谷健太郎が書いた「たすきがけの湯布院」を買って、帰りに読んだ。軽妙な筆致ゆえ、すいすいと読める。

 

当時隆盛を極めた歓楽的な温泉街へ背を向け、自然と日常を重視した街造りを推進したという経歴から、中谷は高邁な理想を語る理論派だと勝手に想像していたが、この本から浮かび上がる著者の人物像はそれとはいささか異なる。法螺を吹くことから「ホラ」と呼ばれた中谷の個々の行動は、真剣だか冗談だか判らないようなものが多い。また、観光客向けに新たに踊りを作るなど、一歩間違えれば山師的なところもある人物だ。しかし、一見いい加減な言動をとりながら、大変な推進力を持って理想の街造りを進めていくのだから、大した人物だ。

 

「機が熟していない」という理由で、1980年代以降の進展をほとんど記していないのが惜しい。続編も読みたい。

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たすきがけの湯布院