一票の格差の是正方法

最近の日本では選挙における「一票の格差」が問題となっている。2009年衆議院選では最大格差が2.3倍、2010年参議院選では同5倍だった。

 

一票の格差が問題となっているのは、日本だけではないようだ。最大の格差は、英国平民院(下院)では5.05倍、米国下院では1.88倍、米国上院では66倍、フランスでは2.37倍、韓国では2.99倍、ドイツ連邦議会(下院)は1.47倍だ。(格差の数値は日本経済新聞の2013年4月8日朝刊による)。米国の上院のように、連邦制の州代表については一票の格差という概念が当てはまらないかもしれないが、格差が深刻な国は少なくない。

 

日本では、この格差を是正するために、「0増5減」など様々な区割り改定案が検討されているが、議論が紛糾してなかなか決着が付かない。僕は一票の平等は重要だし、現在の制度を前提とすれば区割りの改定は必要だと思う。しかし、そもそも現在のような小選挙区制度そのものが時代遅れなのではないだろうか。

 

全国を数多くの選挙区に分割して各選挙区で国会議員を選ぶという方法は、インタネットが普及していなかった時代の産物だ。インタネットが普及する前は、例えば青森県の住民が鹿児島県の政治家の政策を知ることは困難だったろう。しかし現在は、SNSやブログにより、地理的な制約なしに情報を発信できる時代だ。であれば有権者は、自分の住んでいる地域に関わらず、全国の政治家の中で最も支持する人に投票すれば良い。

 

選挙の目的は、突き詰めれば議決権の決定だ。小選挙区制度は、政党毎の「議席数」で議決権を決定する仕組みであり、一人ひとりの議員の議決権は等しい。しかし僕は、インタネット時代にふさわしい国政選挙の仕組みは、全ての国会議員が全国区で選出され、各議員はそれぞれの得票数に応じて議決権を有するというものだと思う。例えば、全国の投票数が5000万票だったとすると、500万票獲得した議員は国会の議決権の10%を持ち、100万票獲得した議員は議決権の2%を持つというものだ。

 

このような方法にはいくつかの利点がある。先ずは、一票の格差が完全に無くなる。そして有権者は、自分の住んでいる地域に縛られずに、最も支持する政治家に投票できる(地元の政治家に投票しても良いが)。更に、地元への利益誘導型の政治が廃れて、全国的な視野で物事を考える政治家が選ばれるようになるだろう。

 

なお、この方法は議院内閣制を前提としている。すなわち、全国区で選ばれた国会議員による投票で、首相が選ばれる。首相公選制を唱える人も多いが、僕は首相公選制では首相と議会の「捻じれ」が生じうることが問題だと思う。先述の方法は、議院内閣制なので首相と議会の捻じれが生じない。また、多くの場合、得票数が最大の議員が首相となるだろうから、最も支持された人が首相となるという首相公選制の利点も備える。インタネット時代に最もふさわしい選挙制度だと思う。