ルキノ ヴィスコンティ 「若者のすべて」

Luchino ViscontiRocco e i suoi fratelli (1960)
家族の愛情は美しい、と思われている。しかし、愛情を注いだ相手に裏切られたら、それでもなお、相手を愛するべきだろうか?


父親の死を機に、田舎からミラノにでてきた母と息子たち。彼らの多くは、定職がなく、アパートの家賃も滞納してしまうという底辺の生活から這い上がろうと、必死に努力する。しかしシモーネは別だ。ボクシングを少しかじってみたものの、娼婦のナディアに溺れ、盗みを働き、弟たちに金をせびるという堕落した生活を送る。そんなシモーネと、弟のロッコ(アラン ドロン)の関係に緊張が生じる。ナディアがロッコと恋仲になったことを恨んだシモーネが、卑劣な行動をとったのだ。酷い仕打ちを受けながらも、なおシモーネを愛するロッコは、なんとシモーネの借金を肩代わりしてしまう。しかしシモーネは更生せず、遂には周りの人達を破滅に追い込むような行動をとる...


シモーネに対するロッコの打算のない愛情は、美しくもあり、苛立たしくもある。裏切られつつもシモーネを愛し続けるロッコを、別の兄弟は「寛大」と評する。しかし、その寛大さがシモーネを付け上がらせているように思える。


本作は1960年の作品なので、画質はあまり良くないものの、映像の構図は素晴らしい。全ての場面が考えぬかれている。人物を少し引いて撮影する場面では、塀が画面を斜めに横切る構図が印象的だ。




 

★★★★・

(WOWOWで録画)