彼女が消えた浜辺

アスガー ファルハディ درباره الی彼女が消えた浜辺 (2009)

単純な題材を味わい深く仕上げた佳作。

舞台はイラン。複数の男女が、一緒に休日を過ごしに貸別荘に向かう。何人かは夫婦と子供だが、男女一人ずつ独身者が居る。

クルマに乗っている間の彼らの楽しそうな表情。俳優たちの演技はとても自然だ。お目当ての別荘はダブル ブッキングで、ガラスの割れた別の別荘に移らざるを得なかったが、こんな出来事をも楽しんでしまう余裕が彼らにはある。

楽しい休日が暗転し、子供の一人が海に溺れてしまう。幸いその子は一命を取り留めたが、今度は独身女性のエリの姿が見当たらない。海を散々探してもエリは見当たらず、一同は最悪の事態を想像し、焦燥感が深まっていく。

題名からして、海辺で失踪事件が起きるだろうというのは容易に想像できるが、監督はそこに更に一捻りを加える。残されたエリの携帯電話を使って、一同はエリの婚約者に連絡を取ることに成功する。しかし、婚約中のエリが婚約者に内緒で旅行に参加した理由を婚約者に言うべきかどうか。理由を言っても言わなくても大きな問題となってしまう。

一同の中でも対応方法に関して意見が割れるが、最終的な対応は保身のための不誠実なものだった。現実はこんなものだ。僕が当事者でも同様な対応を取ったことだろう。監督はこの対応を避難するわけでも擁護するわけでもなく、淡々と描く。

本作は映像が良い。目を見張るような劇的なものではないが、単純ながら良く考えられた映像を楽しめる。

★★★★・