藁の楯

三池崇史 藁の楯 (2013)


警官は人命を守るのが使命だ。しかし護衛の対象が人間の屑だったら、自分の命をも危険に晒して職務を全うすべきだろうか。


二人の少女を強姦殺害した清丸国秀(藤原竜也)。少女のうち一人の祖父で富豪の蜷川(山崎努)が清丸の殺害に10億円の懸賞金を掛けたものだから、清丸は多くの人に命を狙われることになる。福岡で出頭した清丸を東京に移送するに当たって、警視庁は清丸にSPを付けて警護を謀る。


護送中に清丸達は何度も刺客に襲われ、SPの一人が命を落としてしまい、SP達も自分の職務に疑問を持ち始める。しかも、極秘の筈の移送ルートが何故か外部に漏れていて、SP達の居場所がインタネットで公開されている。SPの中に裏切り者がいるのではないか。SP達はお互いに不信感を抱き、雰囲気が殺伐としてくる。この辺りの俳優たちの心理描写は抜群に巧い。


クルマの中で偶然にラジオ ニューズで自分の母の自殺を知り、少しは態度がしおらしく変わったかのように見えた清丸。しかし清丸は、SP達の警戒が若干緩んだ隙に逃亡を謀り、SPの白石(松嶋菜々子)を殺してしまう。最後に残ったSPの銘苅一基(大沢たかお)は憤怒に駆られ、清丸の口に銃口を差し込む。引き金を引くべきか引くまいか。職務に対する忠誠心と清丸に対する憎しみが瞬間に交錯し、銘苅が大声を張り上げる緊張感の中で、場面は暗転する…


★★★★・




(以下ネタバレ)




先述の場面が暗転した後、描写が続き、結局銘苅は清丸を射殺せずに警視庁まで移送したことが判る。銘苅は人命を守るという職務を全うしたのだが、それが皮肉な結果を持たらす。しかし僕は、場面が暗転したところで作品を終え、銘苅が清丸を射殺したかどうかの判断を観客に委ねた方が余韻が残って良かったと思う。

 

清丸役の藤原竜也は、演技はとても巧いが、童顔なため、余り凶悪犯人という感じがしない。