建築学概論

イ・ヨンジュ『건축학개론』 (2012)

純愛というものを久しく経験していない僕が、本作を見て切ない気持ちになってしまった。

建築事務所の下っ端の男性スンミンのところに、裕福そうな女性のソヨンが家の設計を頼みに来る。二人は大学の同級生で、久し振りの再開だ。ソヨンは医者と結婚していると言うが、夫の話は全然しない。話が展開するうちに、ソヨンがスンミンに好意があるように思えてくるが、しかしスンミンは婚約中で、間もなくアメリカに生活の場を移すところだった。

映画は現在の二人の描写の間に、二人が大学生だったころのフラッシュ バックを差し挟む。

一緒に建築学概論の講義を受講したことを切っ掛けに、二人は行動を共にするようになる。しかし、お互いに相手のことが好きなのに、想いを口にすることができない。この辺りのじれったさが良い。恋愛関係に発展しないまま時間が流れ、ある件を切っ掛けにお互いの間に誤解が生じ、二人は交流を絶ってしまう...

本作には劇的に盛り上がるような場面は無い。しかし、一つひとつのエピソードが良く出来ている。例えば、ソヨンとスンミンの両者とも、学生時代の思い出の品を取っておいたことが判る場面。食堂を営み裕福でないスンミンの母親が、スンミンが嫌って捨てた偽ブランドTシャツを大切に着ている場面。胸をかきむしられてしまう。

★★★★・