ウィンブルドン 1992年男子決勝 アガシ対イヴァニセヴィッチ

1992年にアンドレ アガシウィンブルドンで初めて優勝したが、これを切っ掛けとして、僕はアガシが好きになった。このアガシとゴラン イヴァニセヴィッチの決勝戦を、22年振りに再見した。

イヴァニセヴィッチは、生涯での最多エイス数(10,183本)、1シーズンでの最多エイス数(1996年の1477本)、1大会での最多エイス数(2001年ウィンブルドンでの213本)の記録を持っており、テニスの歴史に残るビッグ サーヴァーと言えよう。1992年のウィンブルドンでも、圧倒的なサーヴ力で決勝まで勝ちあがってきた。

対するアガシはストローカーで、サーフェスの速いウィンブルドンを苦手としてきた。ウィンブルドンは1988年から1990年まで出場もしていない

勢いから言えばイヴァニセヴィッチが優位とも思えるが、結果がそうならないのがテニスの面白いところだ。第1セットこそイヴァニセヴィッチが取ったものの、第2セットと第3セットは、アガシのリターンとパスが驚くべき精度を見せ、アガシが取る。第4セットはアガシの集中力が低下し、セットを失ってしまったが、第5セットに入って再びアガシが盛り返す。サーヴィス キープが続き、最後のイヴァニセヴィッチのサーヴィス ゲイムで、イヴァニセヴィッチはプレッシャに負け、2本のダブル フォールとを犯してブレイクされてしまう...

当時この試合を見たときは、緊迫した印象を受けたが、冷静に再見してみると、イヴァニセヴィッチにエラーが多く、大味な感じもする。とはいえ、アガシのリターンとパスは見事なものだ。

当時のウィンブルドンはサーヴ&ヴォレーが主流だった。1981年のジョン マッケンローから2001年のイヴァニセヴィッチまでの間で、サーヴ&ヴォレーを武器としない選手が優勝したのは、1982年のジミー コナーズと1992年のアガシだけだった。この二人ともリターンの名手として知られる。速いサーフェスではビッグ サーヴァーが有利と言われるが、サーヴを上回るリターン力が有れば勝てるということだ。

全てのグランド スラムで優勝したアガシは不思議な選手だ。プレイ スタイルからすれば、クレイのロラン ギャロス(全仏)を得意とし、芝のウィングルドンを苦手としそうな感じがするが、実際には最初に優勝したグランド スラムがウィンブルドンで、最後に優勝したグランド スラムがRGだった。