ノヴァク ジョコヴィッチの強さは圧倒的だった。ロジャー フェデラーとの決勝を3-1で制した。
前哨戦でジョコヴィッチは、トロントでアンディ マレイに、シンシナティでフェデラーに、それぞれ決勝で敗退している。そして、全米オープンでも、準々決勝まではむしろフェデラーの方が好調に見えた。しかしジョコヴィッチは準決勝で、去年の優勝者のマリン チリッチに完勝し、決勝でも最高の調子を発揮した。一番大切な試合にピークを持ってくるのはさすがだ。
決勝は雨で開始が3時間遅れ、両者ともに難しいコンディションで開始された。第1セットはフェデラーのサーヴの確率が低く、ジョコヴィッチが奪う。第2セットに入ってサーヴが安定してきたフェデラーは、終盤のジョコヴィッチのサーヴィス ゲイムを激闘の末破り、セット カウントをタイに戻す。
第3セットの前半がこの試合を決めた。第2セットで消耗したジョコヴィッチは、第3セットの前半にストロークが乱れ始め、フェデラーに何回かチャンスが訪れる。しかしフェデラーも疲れ故にショットの精度が甘くなり、チャンスを活かせずに、またもやセットを奪われてしまう。第4セットはジョコヴィッチが2ブレイク先行し、終盤でフェデラーが1回返したものの、最後は力が及ばなかった。
フェデラーはシンシナティから非常に好調だった。サーヴが力強く、ストロークもリターンも浅い位置で打ち、攻撃的なテニスを展開していた。シンシナティではSABR (Sneak Attack By Roger)と呼ばれる、新しい戦術も取り入れた。これは、相手のセカンド サーヴの際に、サーヴィス ライン近くまで前進し、まるでハーフ ヴォレーのようにリターンを打つものだ。このSABRはシンシナティでも全米でも、高い効果を上げていた。
それでもフェデラーは勝てなかった。第3セットの前半を除いてジョコヴィッチのストロークの精度が極めて高く、フェデラーはストローク戦では苦しい展開を強いられてしまった。この日のジョコヴィッチは、誰がどんな調子で挑んでも勝てないほどの高い水準のプレイを見せた。
今年のジョコヴィッチは、2011年に続いて、ローラン ギャロス以外の三つのグランド スラムで優勝するという快挙を成し遂げた。グランド スラムの優勝数も10回となり、歴代7位タイとなった。テニス史上最高の選手の一人と言えよう。
グランド スラム優勝回数の歴代7位までの内、フェデラー、ナダル、ジョコヴィッチという3人が現役でいる現代は、テニスの黄金時代だ。
順位 |
選手名 |
GS優勝回数 |
1 |
Roger Federer |
17 |
2 |
Rafael Nadal |
14 |
2 |
Pete Sampras |
14 |
4 |
Roy Emerson |
12 |
5 |
Rod Laver |
11 |
5 |
Björn Borg |
11 |
7 |
Novak Djokovic |
10 |
7 |
Bill Tilden |
10 |
この全米は、フェデラー ファンとしては残念な結果に終わってしまった。しかし、今のようなプレイを続けられれば、まだグランド スラムで優勝する可能性は有ると信じている。