2017年男子テニス界の最大の驚きは、ラファエル ナダルとロジャー フェデラーの劇的な復活だった。ナダルは31歳、フェデラーは36歳。両者ともここ数年はグランド スラムで優勝できず、また、去年後半は怪我のためツアーを欠場し、キャリアがほぼ終わりかけていると思われてきた。
怪我から復帰後の全豪オープンで、両者はいきなり決勝に進出し、稀代の接戦を経てフェデラーが優勝した。その後、ナダルはモンテカルロ、バルセロナ、マドリッド、ローラン ギャロスと、クレイ コートで優勝を重ね、更には全米オープンと北京でも優勝し、合計6個のタイトルを手中にした。
フェデラーは、全豪の後、インディアン ウェルズ、マイアミ、ハレ、ウィンブルドン、上海、バーゼルと7大会で優勝。
年末ランキングは1位がナダル、2位がフェデラーだった。30代のこの二人が、年間4大会のグランド スラムの全て、9大会のATP 1000(マスターズ)の内の5大会を制したことになる。これは驚くべきことだ。
他のヴェテランや中堅達は、怪我に悩んだ者も多かった。ノヴァク ジョコヴィッチ、アンディ マレイ、スタン バブリンカ、錦織圭、ミロス ラオニッチは、怪我のためにシーズン途中から欠場した。ナダルとフェデラーも万全ではない。フェデラーは、夏の北米ハード コート シーズンで背中を痛め、成績が振るわなかった。ナダルも、年末のパリとツアー ファイナルの2大会連続で、膝の怪我のために途中棄権した。テニスは過酷なスポーツなので、体調を維持するのは難しい。
中堅や若手では、26歳のグリゴー ディミトロフが、シンシナティやツアー ファイナル等4大会で優勝し、3位に上がってきた。かつてはフェデラーの再来とまで言われたディミトロフも、中々伸び悩んでいたが、ようやく大きな大会でも優勝できるようになってきた。
Rank |
Player |
Points |
1 |
R. Nadal |
10645 |
2 |
R. Federer |
9605 |
3 |
G. Dimitrov |
5150 |
4 |
A. Zverev |
4610 |
5 |
D. Thiem |
4015 |
6 |
M. Čilić |
3805 |
7 |
D. Goffin |
3775 |
8 |
J. Sock |
3165 |
9 |
S. Wawrinka |
3150 |
10 |
P. Carreño Busta |
2615 |
11 |
J. del Potro |
2595 |
12 |
N. Djokovic |
2585 |
13 |
S. Querrey |
2535 |
14 |
K. Anderson |
2480 |
15 |
J. Tsonga |
2320 |
16 |
A. Murray |
2290 |
17 |
J. Isner |
2265 |
18 |
L. Pouille |
2235 |
19 |
T. Berdych |
2095 |
20 |
R. Bautista Agut |
2015 |
21 |
N. Kyrgios |
2010 |
22 |
K. Nishikori |
1885 |
23 |
A. Ramos-Viñolas |
1845 |
24 |
M. Raonic |
1795 |
25 |
G. Müller |
1695 |
(引用元: Google)
ナダル、フェデラー、ディミトロフに共通するのは、最近コーチを替えたことだ。フェデラーは、ステファン エドバーグの退任に伴い、去年から元ランキング3位のイヴァン ルビチッチをコーチに付けている。ナダルは、元1位のカルロス モヤが今年からコーチに加わり、長年連れ添ってきた叔父のトニは今年限りで退任する。ディミトロフも、かつてイヴァン レンドルと共にマレイのコーチを勤めたDaniel Vallverduを年初からコーチに迎えている。ここ数年、ジョコヴィッチ、マレイ、錦織のように、コーチの変更により成績を向上させる選手が増えている。コーチの選択は極めて重要だ。
4位に登ってきたのは、若干20歳のアレクザンダ ズヴレヴだ。ズヴレヴは、ローマ、カナダ等5大会で優勝し、NextGenと言われる若手の中でも頭一つ抜け出た感じだ。
来年の予測は難しい。ナダルとフェデラーは、怪我が無ければ活躍するだろうが、年齢的に怪我のリスクは高まるだろう。ジョコヴィッチは、肉体面では万全の状態で復帰してくるだろうが、宗教家の影響から脱却できるかどうかが鍵だ。マレイは再びレンドルとのコーチ契約を解消したので、去年のような活躍は難しいと予想する。バブリンカも、グランド スラムを3回共に制したマグナス ノーマンとのコーチを契約を解消したのは痛い。ディミトロフやズヴレヴが1位になれるかどうかは、ナダル、フェデラー、ジョコヴィッチの状態次第だろう。