男子テニス2016年 - アンディ マレイが遂に頂点へ

2016年の男子テニスは、過去に類を見ないような1年だった。年の前半と後半で、こうまで様相が異なることはめったに無い。

ノヴァク ジョコヴィッチは、今年のローラン ギャロスで優勝し、遂に生涯グランド スラムを達成した。しかも、去年のウィンブルドンからグランド スラム4連覇だ。更に勝ち方が良かった。思い起こせば、去年の北米ハード コートで、ジョコヴィッチは、カナダでアンディ マレイに、シンシナティでロジャー フェデラーに負けたが、全米オープンではフェデラーに勝って優勝した。去年のツアー ファイナルでは、ラウンド ロビンでフェデラーに負けたもの、決勝ではフェデラーに勝って優勝した。今年の春のクレイ コートでも、ジョコヴィッチは、ローマでマレイに負けたものの、ローラン ギャロスではマレイに勝って優勝した。重要な大会や試合に向けて自分の調子を最高に持ってくることができるのがジョコヴィッチだ。

グランド スラムを4連覇し、ジョコヴィッチの時代が長く続くかと思われたその時から、ジョコヴィッチの調子は下降線を辿り始めた。ウィンブルドンで早期敗退したときは、一時的な気の緩みとも思われたが、不思議なもので、こういう時には体の調子も悪くなる。夏以降ジョコヴィッチは肘や手首や爪先の故障に悩まされ、ローラン ギャロスの後は優勝が一つも無い。

年の後半に猛追を見せたのがマレイだ。マレイは、ローラン ギャロス前の優勝はローマだけだったが、ローラン ギャロス以降は、クイーンズ、ウィンブルドン、リオ オリンピック、北京、上海、ウィーン、パリ、ツアー ファイナルと8勝もしている。北京からツアー ファイナルまでは5連勝だ。ミロス ラオニッチとのツアー ファイナル準決勝は、3セット マッチとしては異例の3時間38分の激戦で、試合直後のマレイは疲れた表情だったが、にも拘わらず決勝でジョコヴィッチに勝ったのは見事だった。

マレイが初めてランキングの2位になったのは2009年の8月で、当時弱冠22歳だった。しかし、フェデラー、ラファエル ナダル、ジョコヴィッチといった選手に阻まれ、1位にはなかなか成れなかった。それから7年という歳月を経、ようやく1位に上り詰めたが、初めて1位になった時の年齢が29歳というのは、ランキング史上最高齢だ。ジョコヴィッチの調子が低下気味、フェデラーナダルも怪我で治療中という状況にも恵まれたが、それでも今年のマレイの活躍は快挙と言えよう。

マレイの活躍は、コーチの重要性を再認識させた。イヴァン レンドルは2011年にマレイのコーチに就任したが、マレイは2012年の全米オープンでグランド スラム初優勝を果たし、翌2013年もウィンブルドンでも優勝した。レンドルが2014年にコーチを退任した後(退任の理由は明らかにされていない)、元女子選手のアメリー モレズモがコーチとなったが、マレイはモレズモの元ではグランド スラムで優勝できなかった。今年レンドルが再びコーチに就任するや、マレイはウィンブルドンで二度目の優勝を果たし、年間1位にまでなってしまった。マレイの努力がもちろん大きかったろうが、レンドルは稀代の名コーチと言えよう。

今年はフェデラーナダルの肉体の衰えが目立ってきた。フェデラーは全豪の直後に膝を痛め、初めて手術を受けた。その後一時的に復帰したものの、結局ウィンブルドン後に再び治療に専念することにし、シーズン後半は欠場した。ナダルも手首の状態が思わしくなく、シーズン後半は欠場した。フェデラーは35歳、ナダルは30歳、ジョコビッチは29歳。1位になったマレイも29歳なので、今の調子を長期間持続することは難しいだろう。

これで、フェデラーナダル、ジョコヴィッチ、マレイの"Big 4"それぞれが1位を経験したわけだが、彼らに続くのは誰だろうか。

#

Player

Points

Move

1

 Andy Murray (GBR)

12,685

Steady

2

 Novak Djokovic (SRB)

11,780

Steady

3

 Milos Raonic (CAN)

5,450

Increase1

4

 Stan Wawrinka (SUI)

5,315

Decrease1

5

 Kei Nishikori (JPN)

4,905

Steady

6

 Marin Čilić (CRO)

3,650

Increase1

7

 Gaël Monfils (FRA)

3,625

Decrease1

8

 Dominic Thiem (AUT)

3,415

Increase1

9

 Rafael Nadal (ESP)

3,300

Decrease1

10

 Tomáš Berdych (CZE)

3,060

Steady

11

 David Goffin (BEL)

2,780

Steady

12

 Jo-Wilfried Tsonga (FRA)

2,550

Steady

13

 Nick Kyrgios (AUS)

2,460

Steady

14

 Roberto Bautista Agut (ESP)

2,350

Steady

15

 Lucas Pouille (FRA)

2,156

Steady

16

 Roger Federer (SUI)

2,130

Steady

17

 Grigor Dimitrov (BUL)

2,035

Steady

18

 Richard Gasquet (FRA)

1,885

Steady

19

 John Isner (USA)

1,850

Steady

20

 Ivo Karlović (CRO)

1,795

Steady

As of November 21, 2016

(Source: Wikipedia)

 

今年は25歳のラオニッチが遂に3位にまで上がってきた。ラオニッチはウィンブルドンの決勝でマレイに敗れたものの、準決勝ではフェデラーに勝っている。短期間ジョン マッケンローのコーチを受けたせいか、今年のラオニッチは積極的にネット プレイを展開し、巨体に関わらず器用にヴォレーを決めている。ツアー ファイナルの準決勝では、マレイに互角以上の戦いを見せた。僕はラオニッチが歴史に残るほどの選手とは思わないが、短期的に1位を取る可能性はあるだろう。

同じく25歳の錦織圭はラオニッチにやや差をつけられた感じだ。錦織は全米でマレイに勝ってテニス界を驚かせたが、ツアー ファイナルではマレイやジョコヴィッチとは勝負にならなかった。

今年は23歳のドミニク ティームが8位まで上がってきた。ティームは片手打ちバックハンドながら、フォアハンド、バックハンドとも強打が持ち味だ。ツアー ファイナルではジョコヴィッチから初めて1セット奪った。未だマレイやジョコヴィッチには勝てないが、この年齢ならもっと上達するだろう。