テニス コーチの重要性

今年はテニス選手にとってのコーチの重要性を感じさせられた。

現在の男子テニス界で、選手とコーチの最高の組み合わせは、ラファエル ナダルと叔父のトニ ナダルだろう。トニはテニス選手として大きな実績を残したわけではないが、ラファエルの強靭な精神力を鍛え上げるのに中心的な役割を担った。

最近は往年の名選手をコーチに据える選手が増えてきている。

年初にラケットを変えるとともに、ステファン エドバーグをコーチに付けたロジャー フェデラーは、その効果が年の半ばから出てきた。しばしばフェデラーはボレーが巧いといわれるが、去年まで僕はそうは思っていなかった。確かにフェデラーは、ネット プレイが下火になっている現代の選手にしてはボレーが上手いが、ピート サンプラスエドバーグやジョン マッケンローの域には達していないと思っていた。しかし、エドバーグをコーチに付けてから、フェデラーのボレーは着実に上達した。ネットへの詰め方も良いし、ロー ボレーの処理の仕方も良い。怪我からの回復や、新しいラケットとの相乗効果で、今年のフェデラーは完全に復活したと言えよう。

去年マイケル チャンをコーチに採用した錦織圭も、今年大きく飛躍した。この二人はとても良い組み合わせだと思う。現代の男子テニスでは、身長が高くないと大きな大会で勝つのは難しい。身長180cm未満で最後にグランド スラムで勝ったのは、2004年全仏のガウディオ(175cm)で、その前だと1989年全仏のチャン(175cm)になってしまう。身長178cmの錦織が、サーブで得点を量産するのは難しく、粘りのストロークが必要となる。コーチとしてチャンは最適だろう。

このところグランド スラムの決勝で負けることが多かったノヴァク ジョコヴィッチは、ボリス ベッカーをコーチに付けたとたん、ウィンブルドンで優勝してしまった。ジョコヴィッチの場合は、ベッカーが居なくても勝てたと思うが...

過去の名選手をコーチに採用する流れを作ったのは、アンディ マレイだろう。2012年にマレイがイワン レンドルをコーチに起用したときは、その人選の妙に唸ったものだ。レンドルはグランド スラムの決勝で4回敗退し、小心者と揶揄されながらも、遂に偉大なチャンピオンとなった。才能が有りながらグランド スラムで優勝できないマレイにはぴったりの人物だ。その結果は直ぐに出、マレイは2012年の全米と2013年のウィンブルドンで優勝を成し遂げた。しかし、そのマレイとレンドルは今年初めに関係を解消してしまった。理由は公表されていないが、レンドル側から契約を解除したと言われている。マレイはかつての女子1位のアメリ モレスモを、ウィンブルドンの直前に代わりのコーチに選び、世間を驚かせた。この組み合わせは今のところ結果を出せていない。マレイは今年は不振が続き、年末にようやくいくつかの小さな大会で優勝したが、大きな大会で上位選手には勝てていない。ツアー ファイナルではフェデラーに完敗を喫し、錦織にも初めて負けてしまった。果たしてモレスモにレンドルの代わりが勤まるのだろうか...