風の前奏曲

イッティスーントーン ウィチャイラック「風の前奏曲

タイの伝統楽器ラナート(木琴)の奏者ソーン シラパバンレーン(1881~1954)の生涯に基づいた作品。

 

楽家の子供ソーンは、地元の田舎では卓越したラナートの才能を誇っていた。青年に成長しバンコクに出てきたソーンは、競技会で天才クンインに破れ、音楽への意欲が萎んでしまう。王族の楽団に召抱えられたソーンは、競技会でクンインと対決することになる。いったんは逃避したものの、気を取り直して望んだ競技会では、遂にクンインを破る。

 

月日が流れ、第二次世界大戦中のタイ。ソーンは老境に達している。上からの近代化(西洋化)により伝統的な音楽や芝居が禁止されているが、この禁止令を破ったソーンの弟子は軍に追われる羽目になる。家宅捜索にやってきた軍が立ち去らんとするとき、ソーンは禁止されているラナートを再び引き始める…

 

ラナートに対するソーンの愛情や誇り、そしてクンインに敗れたときの挫折感に共感できる。伝統音楽を蔑む軍人に対して、静かに、しかし毅然と「根を忘れてはいけない」と言う姿に感動する。やや違和感があったのが、何度か挿入される競技会の場面。事実に基づいていたにせよ、速弾きの技巧ばかり競うのは、この優美な楽器にはそぐわないと感じた。

★★★・・

http://kaze.eigafan.com/cast01.html

銀座テアトル シネマにて。