にっぽん昆虫記

今村昌平「にっぽん昆虫記」

大正時代末の東北の寒村に生まれた「松木とめ」。いたいけな少女は、都会に流れ出て行き、自分の身体を売って生計を立てるようになる。と書くと「とめ」の人生は単に悲惨なだけのように聞こえるが、したたかにのし上がってゆく「とめ」は、やがては人を使う身になる。「とめ」の娘、信子は、母と似たような人生を歩みかけるが、結局は違う道を選び、恋人と未開の地の開拓を始める…

 

寒村の暗い屋内、納屋の中から逆行で撮った子供たちの姿。日本の前近代の映像はとても印象的だ―単純に「昔は良かった」というのではなく、貧しさに圧倒されるという意味も込めてだ。そして、近代化に踏み出しつつある都会の景色の変化と、そこに蠢く欲望を、ねちっこいカメラ ワークが切り取る。

 

というように優れた映画だと思うが、この映画が製作された年に生まれて、ここに描かれている貧しさを運良く知らずに済んでしまった僕は、観ている間中、居心地の悪さを感じてしまったのも事実だ。

★★・・・