ゆれる

渋谷CQNで話題の西川美和ゆれる」を観た。

嫉妬や偽善-人間の心の暗部を鋭く描くこの映画を観た者は、まるで自分の心の中を見透かされたような居心地の悪さが混じった、複雑な感銘を受けることになる。

売れっ子写真家の猛(オダギリジョー)が、母の法事のために帰省する。実家のガソリン スタンドで働く実直な兄の稔(香川照之)と、従業員の智恵子(真木よう子)と猛の3人は渓谷に遊びに行くが、吊橋の上で稔と智恵子が口論を起こし、次の瞬間、智恵子が川に落ちて死んでしまう。稔は犯人として検挙され、猛は稔の無罪を証言すべく法廷に立つ…

田舎で平凡な日々を送っている稔は、東京で華やかな暮らしをしている猛に嫉妬の念を抱いている。この二人の間の微妙な愛憎が、事件の謎解きと絡み合い、作品に緊張感を与えている。題名の「ゆれる」は、吊橋の揺れと兄弟の心理の揺れの両方を掛けているのだろう。巧妙な伏線を配し、細部まで良く練れた脚本が素晴らしい。人間の心の暗部を確かな演出力で描ききっている。

★★★★★