ジェイミー・オリヴァーの給食革命

WOWOWで4週連続で放映された「ジェイミー・オリヴァーの給食革命!」という番組を観た。英国の「セレブリティ シェフ」ジェイミー・オリヴァー(Jamie Oliver)が、英国の学校給食の質の悪さを見かねて改善運動を起こした模様を描いた、素晴らしいドキュメンタリだ。

 

ジェイミーが立ち上がる前の給食は、コスト削減ばかり気にしていて劣悪な質のものだった。調理師(年配のご婦人i.e.給食のおばさん)は大手業者から配達される調理済み食品を温めるだけ。それらは合成肉や人工調味料をふんだんに使っものだらけだったが、ジャンク フードに慣れた子供たちは、そんな酷い食事を美味しいと思って喜んで食べていたのだった。

 

ジェイミーは先ずは中学校と小学校それぞれ1校づつ選んで、健康に良い素材を使ったレシピの給食を提供しようとしたが、いくつもの難問に突き当たる。1食の単価は僅か37ペンス(80円程度)。お洒落なレストランのオーナーであるジェイミーは、予算に収まる献立を中々作れない。ようやく作成した献立も、今度は調理師達が作ることができない。業者の調理済み食品を温めるだけだった調理師達は、大量の料理を自ら作るのに慣れていなくて、ストレスが溜まるばかりでジェイミーと衝突する。なんとか料理を作っても、今度は子供たちが受け付けてくれない。ジャンク フードに慣れきってしまった子供たちは、野菜が含まれた料理をことごとく残してしまい、以前からのジャンク フードばかり選んでしまう。

 

絶望的な状況でもジェイミーは諦めない。新しい料理を食べない子供たちには、硬軟両様のやり方で臨む。給食からジャンク フードを完全に追放し、新しい献立の料理のみを出す傍らで、特に嫌がる子供たちと一緒に料理を作って食に関する興味を持たせようとする。当初はジェイミーに対する抗議のデモンストレーションまで起きたが、そうして3ヶ月ほど経つうちに、子供たちもジェイミーの給食を受け入れるようになっていった。しかも驚くことに、健康に良い給食を食べ始めた子供たちは、授業への集中力も改善したのだ。

 

2校で成功したジェイミーは、次にグリニッジ(子午線で有名なロンドン近郊の町)全体に運動を拡げ、更にはトニー ブレアに面会して全国展開を勝ち取る。この数ヶ月の間、ジェイミーは無報酬で献立を考え、調理師の指導をしてきた。家庭や自分の店に割く時間が少なくなったため、妻との仲が一時悪化したり店員から不満を言われるなど、極めて厳しい状況の中で給食改善運動を進めるジェイミーの情熱には驚くばかりだ。仕事が大変になったために不満を述べていた調理師達も、終いにはジェイミーの情熱と、そして料理を作る喜びに目覚めて、給食の改善を進めるようになっていく。たった一人の人間の情熱が、英国全体の給食の改善という途方も無い事業を生み出す様に深い感動を覚えた。