あるいは裏切りという名の犬

Olivier Marchal, 36 Quai des Orfèvres あるいは裏切りという名の犬(2004)

 侠気があるが不器用ゆえに損をしてしまう男と、卑劣だが手段を選ばず伸し上がっていく男―古典的とも言える対比を、この映画は確かな演出で描ききる。

パリ警視庁のレオ(ダニエル オートゥイユ)は、時には犯人に暴力を振るったり、違法なやり方で捜査したりする古いタイプの刑事だが、仕事に対する熱意は人一番だ。レオとそのライバルのドゥニ(ジェラール ドパルデュー)は、現金輸送車強奪犯を追うが、その捜査の最中に、ドゥニの不手際で同僚が死んでしまう。ドゥニは自らの不手際を揉み消すばかりか、更にはレオの追い落とし工作まで図り、昇進を射止めてしまう。7年間投獄され全てを失ったレオは、出所後、銃を携えて警視庁のパーティに乗り込んだ。洗面所でドゥニを捕まえたレオは、銃口をドゥニに突きつける。引き金を引くか引くまいか…

この映画には、無駄な台詞や冗長な場面や大げさな感情表現というものが無い。演出も、そして俳優達の演技も、簡潔で禁欲的な様がハードボイルドな魅力を生んでいる。不器用で欠点も多いが信念に忠実なレオがカッコいい。

★★★★★

 

(銀座テアトルシネマ)