ダウン バイ ロー

Jim Jarmusch, Down by Law (1986)

向上心がない飲んだくれのDJザック(トム ウェイツ)、自分は大物になると夢想しているしがないポン引きのジャック(ジョン ルーリー)、英語が拙いイタリア人いかさま師のロベルト(Roberto Benigni)。映画はこの三人が刑務所から脱獄する様を描くが、脱獄のサスペンスが主題ではない。

社会に居場所が無いはみ出し者達が奇妙な存在感を醸し出す。それは、荒んだ救いのないものではなく、どこか間の抜けたユーモラスなものだ。

刮目すべきは白黒の映像の美しさだ。ザックが屋外で酔っぱらっている場面における、軒先の明かりと夜空の対比。脱獄した三人が湿地帯を横切る場面における、静止して鏡のように光る沼の水面。鮮烈な印象を残す映像の数々。

普通の映画が売り物にするような筋の面白さはない。しかし、登場人物の存在感と映像の美しさが、不思議に糸を引く印象を残す。

★★★★・

(WOWOWで録画)