時計仕掛けのオレンジ

Stanley KubrickA Clockwork Orange (1971)

好きになるにせよ嫌いになるにせよ、この映画を観る者は感情を激しく揺さぶられずにはいられない。

欲望のままに暴力や盗みや強姦を繰り返す札付きの不良達。そのリーダーのアレックス(マルコム マクドゥエル)は遂に逮捕され監獄に送り込まれるが、犯罪者に対する特殊な精神治療の実験台に選ばれる。その精神治療とは、治験者に対して薬物を投与しながら残虐な映像を強制的に見せるというものだ。この治療を受けたアレックスは、暴力行為を振るおうとすると吐き気を催し、女性に対しても性欲がわかなくなる。アレックスは「直った」のだ...

欲望の抑制が効かない社会と管理社会との葛藤を描こうという意図が監督のクーブリックにあったのかどうか知らないが、このような単純な二項対立には意味がない。筋違いな感想かもしれないが、この映画の『魅力』は、その思想よりも数々の奇妙な暴力シーンにあると感じた。アレックスが『雨に唄えば(Singing In The Rain)』を唄いながら作家に暴力を振るう場面や、精神治療を受けるアレックスが強制的に瞼を開かされて残虐な映像を見せられる場面など、嫌悪感を覚えつつも印象に残る場面が多数ある。

★★★★・