レイルウェイ 運命の旅路

Jonathan TeplitzkyThe Railway Man (2013)

鉄道と古本が好きな中年の英国人男性エリック ローマクス(年配になってからをコリン ファース、若い時をジェレミー アーヴィンが演じている)。彼は鉄道で偶然に乗り合わせた女性パティ(二コール キッドマン)と恋に落ち、二人は結婚する。幸せな結婚生活が始まったものの、エリックの精神状態が時々おかしくなる。第二次世界大戦中に、日本軍の捕虜となった時の精神的苦痛が未だに癒えていないのだ。この件の詳細をエリックは話したがらない。パティはエリックの戦友のフィンレイから、当時の状況を聞きだす。

第二次世界大戦中に、日本軍はタイとビルマの間を結ぶ鉄道の建設に、捕虜の英国人兵士達を従事させた。日本軍の捕虜の扱いは、ジュネーヴ条約にそむくものであり(そもそも日本はこの条約を批准もしていなかった)、過酷な労働や拷問が繰り返し行なわれた。エリックも、戦況を知るために密かにラジオを作製したのがばれて、水攻めなどの拷問を受けていたのだ。

フィンレイが見つけてきた新聞記事で、自分を拷問した日本軍通訳の永瀬隆(年配になってからを真田広之、若い時を石田淡郎が演じている)がタイで暮らしていることを知ったエリックは、永瀬と会い、謝罪させようと決意した...

職人的作りの、良くできた映画だ。俳優達の演技も上手い。日本軍の捕虜の扱い方は残虐だが、これは直視すべき現実だ。

本作は史実に基づきながらも、史実を若干脚色している。僕は映画が史実を忠実になぞるべきだとは思わないが、本作は脚色が良くない効果をもたらしている点が有ると思う。

史実では、エリックと永瀬との間で何度か手紙のやり取りがあり、二人が対面した時に永瀬から謝罪が有ったそうだ。しかし本作では、エリックが不意打ちで永瀬の元を訪ね、永瀬は「自分は単なる通訳だった」など自己保身的な発言を重ね、エリックが永瀬に謝罪を迫ったように描いている。恐らく、手紙のやり取りは映像化しにくかったので、監督はエリックが永瀬に予告無しに会いに行ったことにしたのだろう。また、不意打ちを食らった永瀬が最初から謝罪するのは逆に不自然なので、動揺して自己保身的な発言をしたことにしたのだろう。この結果として、二人の初対面時の永瀬は、自分の犯した過ちを認めない卑怯な人物に感じられてしまう。映画では、初回の対面の後に、永瀬からエリックへ謝罪の手紙が届き、エリックが再び永瀬を訪問し、二人は和解したことになっている。しかし僕は、史実通りに、初回の対面時に永瀬が謝罪し、エリックが永瀬を赦したとした方が、良かったと思う。

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