フェデラー5連覇-ウィンブルドン決勝

ウィンブルドンの男子決勝から一夜明けても、いまだに自分が見たのは夢だったような気がする。死闘の末、フルセットでナダルを振り切ったフェデラーだが、その勝利は途方もない困難に満ちたものだった。

フェデラー ファンの僕だが、決勝の前は嫌な予感がしていた。理由はいくつかある。ロラン ギャロスの決勝でフェデラーが不甲斐なかったこと。ウィンブルドンで決勝に至るまでにフルセット マッチを2回も制したというナダルの精神力。そして、そもそも去年の決勝の時点で、ナダルは芝でも十分に強さを発揮し、今年は更に進化しているということだ。

第4セットまでは、嫌な展開だった。セット カウントが2対2で同点と言っても、ナダルが試合を優位に運んでいる時間が圧倒的に長かった。ナダルのパッシングは驚くべきものだ。フェデラーがかなりいいアプローチを放ってネットについても、ほとんどパスで抜かれてしまう。しかも第4セットでは、ナダルのチャレンジで判定が覆ったのをきっかけに、フェデラーが珍しく感情的になって崩れていってしまった。

圧倒的に不利に見えたファイナル セットで、しかしフェデラーナダルの僅かな隙に付け込んで勝利をもぎ取る。ナダルは運が悪かった。第4セットで膝を痛めたことが恐らく影響したのだろう。ファイナル セットではストロークのミスが若干増え、サーブの確率も余り良くなかった。ナダルが膝を痛めなければ、果たしてフェデラーが勝てたかどうかわからない。

ともあれ、第3セットまでの質の高さと緊迫感は、テニスという競技の最高の水準にあった。第4セットは若干緩んでしまったが、ファイナル セットのフェデラーの詰めも見事なものだった。フェデラーが5連覇を成し遂げたということもあり、この決勝は歴史に残ることになろう。