パイプ オルガンの製作過程を見るという珍しい機会に恵まれた。僕の妻は大学でピアノを勉強していたのだが、妻の先輩(女性)のご主人が日本で数社しかないパイプ オルガンの製作会社を経営しており、完成間近のパイプ オルガンを見せてくださったのだ。
町田からクルマで15分程の緑豊かな環境にある『マナ オルゲルバウ』は、会社というより社員6人の工房といった佇まいだ。経営者の松崎さんも自らパイプの製作や調律を行なう職人だ。
先ずは共同経営者の中里さん(この方もやはり職人だ)に、木工部分について説明していただいた。倉庫一杯に積まれた材木は、外国産のものもあるが、2年から4年寝かせて日本の気候に馴染ませるそうだ。木を切ったりカンナをかけたりする行程は、ほとんど手作業と想像していたが、意外と機械も使われている。
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それでも、全ての木の部品を若干大きめの材木から切り出してカンナをかけるのは、気が遠くなるような作業だ。倉庫に出荷間近のパイプ オルガンが有ったが、中規模ながら製作には約1年かかったとのこと。原理は単純ながらも膨大な部品から成る構造の複雑さに圧倒される。これでは3,000万円もの値段が付くのは無理もないな。
その後、松崎さんにパイプについて説明していただいた。パイプの口やリードの位置を1ミリ程度変えただけで音が大きく変わってしまうというのは、理屈では判っていても実際に目の当たりにすると新鮮だ。数百本のパイプを全て完璧に調律するのは凄い技術だ。
今までパイプ オルガンの演奏を聴く機会は何度か有ったが、楽器自体に関心を抱いたことは無かった。偶然にも製作過程を見ることができ、高度な職人の技にいたく感服した。