ゴッドファーザー

Francis Ford Coppola, The Godfather (1972)

固い絆で結ばれた家族への愛情。良心の呵責なしに殺人を犯す冷酷さ。相対立するかのような感情が、同じ人物の中に併存している。一筋縄でいかぬ複雑な人間の有り様を描くのが、この映画の非凡なところだ。

シチリアからニュー ヨークへ渡ってきた移民のヴィートー コルレオーネ(マーロン ブランド)は、誰もが恐れるマフィアを一代で築き上げた一族で初めて大学に進学した三男のマイクル(アル パチーノ)は、はじめは父親の稼業を嫌っていたが、他のマフィアに襲われた父を助けようとして、自らマフィアの道を歩み始める。兄からひ弱だと馬鹿にされていたマイクルだが、冷静かつ大胆な実行力により次第に頭角を表し、遂には父を継いでマフィアの首領となる...

一族の人物造形が見事だ。粗暴で短絡的な兄ソニー、派手好きだが頼りない兄フレードー、切れ者の弁護士で異質な雰囲気の養子トム ヘイガン。マイクル以外の兄弟たちも個性的だ。

ヴィートー役のブランドの演技は、圧巻かつ繊細だ。威圧感のあったヴィートーも、銃撃されて瀕死の重傷を負ってから、すっかり弱々しくなってしまう。孫と鬼ごっこを楽しむ姿は、どこにでもいる好々爺だ。人は老いには抗えない。

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