ゼロ グラビティ

Gravity (2013)

テレビで宇宙船の様子が写されると、宇宙飛行士達は無重力状態でふわふわと浮いていて楽しそうに見える。その浮いている状態の描写を突き詰めたのが本作だ。

医学博士のライアン ストーン(サンドラ ブロック)は、ヴェテラン宇宙飛行士マット コワルスキー(ジョージ クルーニー)と共に、初めてスペース シャトルに乗り込む。しかし、二人が船外活動中に別の宇宙船が爆発事故を起こし、その破片を浴びた自分達の宇宙船も故障してしまう。

他の宇宙飛行士達は全員死に、生き残ったのはこの二人だけだ。ストーンの宇宙服の空気が残り少なくなり、二人は遠方に在る別の宇宙船を目指す。命綱で互いの体を結びつけた二人だが、重力や空気抵抗のない状態では中々姿勢を安定させることができない。コワルスキーはそのまま遠くに流されていき、ストーンのみが別のシャトルに辿り着いて、それを使って地球に生還する...

宇宙船の描写のリアリティについては、いろいろ批判もあるようだ。また、コワルスキーが流されていく描写にも物理的に疑問がある。しかし、これらの問題を別にすれば、本作の映像は面白い。作品の多くの場面で、二人の姿勢は宙に浮いた不安定な状態にある。この映像が観客を不安な心理状態に誘うのだ。

本作は映画でなければ成立し得ない。小説では退屈な作品になってしまうだろう。体が常に浮いているような状態で撮影するのは、技術の進歩がなければ無理だっただろう。現代ならではの映画だ。

★★★★・