店は恵比寿と代官山の中程に在る。8人掛けのカウンターがオープン キッチンに面しており、調理の様子が全て見えるのが面白い。BGMを奏でるのは、今時珍しいヴァイナル(アナログ)レコード。こちらの方がデジタルに比べて音が柔らかいとのこと。
肉の薪焼きが名物だが、他の料理も素晴らしい。店主の田窪氏は薪焼きにほぼ専念しているが、他の料理人達の技量もかなり高いのだろう。
素材は全て国産だそうだ。出だしの『カプレーゼ』は、なんと房総半島の水牛からその日に絞った乳を使っているとのこと。シンプルながら、素材の質が極めて高い。
『穴子根/セロリ/ラルド』の穴子は、天ぷらのような見事な揚げ方。
『真鱈白子/芹/アンチョビ』は、白子のねっとりとした食感に陶然とする。
『筋肉ホタテ/西洋茸/唐墨』は奇妙な料理名だが、実の締まったホタテ貝を使ったパスタだ。
お待ちかねの『アイルランドヘレフォード牛/薪/切れ味』は、外側はカリッとした食感で、中身は赤いものの、しっかり火が通っている。いたずらに柔らかさを求めるのでなく、噛み応えを重視した焼き方だ。味付けは塩と胡椒だけだが、これで十分。何気ない付け合わせの人参の美味しさに驚く。
主菜の後にパスタが二品続くのが日本的だ。
『花キラリ/熟成栗』は上品なリゾット。
『TACBO風ボロネーゼ』は、ボロネーゼの肉が見事だ。
口直しの『紅まどんな/レモンリーフ』に続いて供された『ミルク/ピスタチオ/マルサラ』は、アイスクリームの濃厚な味と滑らかな食感が印象的だ。
お茶菓子のフィナンシェまで素晴らしい。かなりカリッとした焼き方で、肉にもフィナンシェにもシェフの個性が出ているのだろうか。
ワインのペアリングも美味しく、ソムリエの説明も丁寧。
最初から最後まで、極めて満足度が高い。
★★★★★