Ode(オード)は広尾のフランス料理店だ。
シェフはグレーが好きだそうで、内装はグレーで統一されている。おしぼりまでグレーという徹底ぶり。10数人掛けられる大きなカウンターに加え、個室が二室有り、満席だった。環境音楽みたいなBGMが流れている。現代的な雰囲気の店だが、男性の給仕達はスーツにネクタイというフォーマルな服装。もちろんスーツの色もグレー。カウンター中央に飾られた、大きな向日葵やススキが、店の禁欲的な雰囲気に華やかさを加えている。
最初の皿はスペシャルテだという「ドラ○ンボール」。オマールのビスクをカカオ バターでコーティングしている。少量ながらとても濃厚で、印象に残る。この品は、量が倍欲しかった。
続いてアミューズ ブーシュが三品。特に良かったのは、枝豆を再構築した品。中身は漉した枝豆をペーストにしており、皮は枝豆を精妙に揚げている。皮も食べられて、皮の軽い食感と中身のトロリとした食感の対比を楽しむ。
続く品は「グレー2022」と題したスペシャルテ。中身は鰯と牛肉。外側は鰯から作ったメレンゲで、文字通り色はグレー。魚と肉という難しい組み合わせだが、味が破綻せず良く纏まっている。外側のメレンゲは軽い食感で、かつ青魚特有の香りがする。この店以外では食べられない逸品だ。
最近の店にしては珍しく、パンが自家製だが、食感が軽く、とても美味しい。料理の量は少なめなので、食欲の旺盛な人は、パンで分量を調整するのが良いだろう。
モッツァレラは、新鮮なモッツァレラの中に焦がしバターやトマトを入れて、複雑な味わいを生み出している。
鱧は二種類の調理法で供する。一つは茶碗蒸し風にして青唐辛子で辛味を付けている。もう一つはフリット。揚げ方が軽く、和食とは異なる魅力がある。
真鯛のソテーは、茸から作った濃厚なソースとの意外な組み合わせだが、これが良く合う。
ホロホロ鳥は、焼き加減も良く、茄子から作ったペースト状の付け合わせも美味しい。ホロホロ鳥の出汁から作ったスープが添えられるが、これが滋味溢れる味わい。
現代的な料理の店だが、オプションでフロマージュも頼める。これらは標準的な味。
デセールやお茶菓子は、強い個性は無いものの、堅実な味。
料理は全般的に、とても独創的で手間が掛かっている。フリットやメレンゲの軽い食感、出汁の取り方など、発想を成果に落とし込む際の基礎技術が高い。内装から料理まで、シェフの世界観が反映された、とても個性的な店だ。デセールが料理と同じくらい独創的になれば、更に素晴らしい店になると思う。
9/10