赤坂 詠月(えいげつ)は、その名の通り、赤坂の繁華街に在る。
4人掛けのカウンターとテーブル2卓という小さな店を、調理二人(大将と弟子)、接客一人(女将)で回している。内装は簡素で、内装より味で勝負する店だ。
突き出しは、冷製の浅利やトウモロコシなど。夏に相応しい爽やかな出だし。
蒸した鰻の椀。鰻は上質で、椀は薄口ながらとても上品。
鯛、貝類、烏賊、雲丹などの刺身も堅実な味。
会津の酒「寫楽」(しゃらく)は、スッキリとした切れの良い味。
琵琶湖の稚鮎は、火の通しが適切。
鮟肝とイクラの巻き寿司は、滑らかな食感が素晴らしく、とても印象的だった。
蒸した鮑は、柔らかさと弾力という矛盾した食感が両立している。素材から自然に取ったという出汁も見事。
会津の酒「宮泉」の味は、僕にとってはやや強く感じられた。
鱧の鍋は、卵や牛蒡でとじており、優しい味わい。
和食店ながら、ここで牛肉が供される。焼き加減も良く、味噌味のソースや蓮根が良いアクセントとなっている。
牛肉で終わりと思いきや、更ににもう一皿供された。蟹を蒸した上で、解して冷製にした品。蟹の身に凝縮感が有り、温度感も的確で、出色の逸品だった。
胃が限界に近かったが、ご飯も頑張って食べた。ご飯にシラスや雌株を掛けた珍しいものだが、これが意外と美味しい。
甘みは、和食店らしい優しい味わい。
我々は大将の直ぐ側の席だったので、自然に大将や女将と会話を交わすようになったが、大将はとても真面目そうな性格。
店構えは簡素だが、味は本格的かつ上品。
8/10