SÉZANNE(セザン)は、フォーシーズンズホテル丸の内のフランス料理店だ。夜の予約が取りにくかったので昼に訪れたのだが、メニューは夜と同じだった。
白を基調とした内装は意外に気軽な感じで、BGMの音量も大きめ。オープン キッチンではないが、厨房との境がガラスで、調理している雰囲気が微かに判る。
イギリス人のシェフは、若くして香港で成功を収め、2021年にこの店が開店する際に日本に渡ってきた。
先ずは定番だというコンテ チーズのグジュール。軽く揚げてある生地は柔らかい。中のチーズはしっとりとした感じ。
「秋刀魚オニオンキャラメリゼ グリーンオリーブ」
上質で脂の乗った秋刀魚を軽くマリネしてある。パイ生地を敷いてあり、食感の変化を楽しむ。
「海月オリーブとアンチョビ」
何とクラゲという、かなりの変化球。香港に住んでいたシェフならではの品だ。食感は正にクラゲだが、オリーブオイルとの組み合わせにより、中華料理とは異なる味になっている。
「エアルームトマトタルトガーデンバジルとブラータチーズ」
トマトのタルトは、かなり踏み込んだ酸味。バジルやチーズとの味のバランスが精妙だ。
「網走キンキ ブイヤベース」
松笠焼きにしたキンキは、身は浅い火入れながら、皮がパリパリとしている。甲殻類などから作ったソースは深みのある味。この皿に限らず、ソースはお代わりでき、好みの量を掛けられる。この皿は良かった。
「松茸包み焼き 銀杏」
日本の松茸は未だ旬でないので中国産。香りは余り無い。大きめのパイ生地が上に載っている。食感の変化を楽しませる意図があるのだろうが、パイ生地の食感が支配的で、余り成功していないと感じた。
「北海道イクラ 胡瓜ホースラディッシュ」
イクラと胡瓜の組み合わせ以上でも以下でも無い。素材の組み合わせのケミストリーに乏しい。
「ラカン鳩 ジロール茸」
これは素晴らしかった。極めて浅い火入れながら温度が高い。柔らかさと弾力感が両立している。二種類のソースは、どちらも美味しい。
「福岡産マイヤーレモン レモンタイム」
お口直しは爽やかな酸味。
「福岡県産イチジク ココナッツ イチジクの葉」
上品な甘さ。
料理は独創的で、意外な素材や調理方法も駆使している。アイディア先行で練れていない皿も幾つか有ったが、印象的な皿も有った。火入れなどの基礎技術が高く、ソースが美味しい。
約1か月前にオンラインで予約し、連れが牡蠣アレルギーだと記載しておいたのだが、その翌日に店から送られてきたメールには驚いた。「(略)恐れ入りますが当レストランは当日の入荷により毎朝メニューを書かせていただくおまかせスタイルを取らせていただいております関係で、お苦手食材につきましては事前の対応のお約束をいたしかねます(略)」。キャンセルしようかと思ったが、料理の評判が極めて高いので、牡蠣が出てきたら連れの分も僕が食べることにして、運任せで店に訪れた。結果的に牡蠣は出てこなかったが、アレルギーについて高級店にこういう(非)対応をされたのは初めてなので、困惑した。当日の接客は良かった。
料理は中々美味しいので、アレルギーの無い人にとっては良い店だろう。
二人で98,000円。来月から一人当たり更に10,000円以上値上がりする。
料理だけなら8/10
アレルギー非対応と料金の高さを鑑みると6/10
再訪はしないと思う。