安東ウメ子のグルーブ

最近買ったCDの中で最も気に入っているのが、アイヌの歌手、安東ウメ子の「ウポポサンケ」だ。

僕は民俗色の強い音楽はあまり好まないが、ウポポサンケに惹かれるのは、それが現代の都市でも通用するグルーブを備えているからだ。ウポポサンケを聴くと、不思議な感覚に襲われる。アイヌの伝統的な弦楽器やパーカッションが、ゆったりとした、単調なリズムを刻む。ビートは決して強くない。そして、安東は、まるで呟いているかのような唄いかたをする。この音楽を構成する個々の要素には、何も刺激的なところは無い。にも関わらず、そこにはグルーブが存在するのだ。そしてその単調なグルーブに身を浸していると、だんだんトランス状態に陥っていく。僕はクラブ音楽には疎いが、ウポポサンケはクラブDJの素材にもなりうるのではないか。CDの帯の惹句は、この音楽を「オーガニック グルーブ」と形容している。なるほどと思わせる形容だ。
★★★★★