ラスト エンペラー

Bernardo Bertolucci, The Last Emperor (1987)

歴史の荒波に翻弄され、清朝の皇帝から戦犯にまで転落してしまった一人の男性。その哀しみと無力感を描いた風格のある作品だ。

わずか3歳で即位した愛新覚羅溥儀は、その4年後には辛亥革命を受けて退位せざるを得なくなる。引き続き紫禁城内での生活を許されたものの、権力は無く、紫禁城の外へ出ることも許されない。後に日本の策略に乗って満州国の皇帝となるも、またもや何の実権も無く、日本の敗戦後は戦犯として収容されてしまう。

没落を止められない苛立ちと無力感を表現した、溥儀役のジョン ローンの繊細な演技が見事だ。フラッシュバックを多用した脚本も良く練られている。そして、ベルトリッチの映像の魔術。遠くから紫禁城全体を映したカメラがそのまま城内に寄っていき、最後は室内の溥儀を映し出す様に驚嘆する。全ての場面の撮影方法が考え抜かれている。

実は観ながら完全に没入しきれない自分に気がついた。それは、帝政を支持しない僕が、溥儀に対してどこか突き放した感情を抱いたからかもしれない。しかし、本作が見事な映画だということは間違いない。

★★★★★

(WOWOWで録画)