伊勢と鳥羽

年末に2泊3日で伊勢や鳥羽などを廻ってきた。先ずは新幹線と近鉄を乗り継いで昼頃に伊勢市へ訪れる。

 伊勢市駅近くの某うどん屋で、名物の伊勢うどんを食べた。麺の太さと汁の色の濃さに驚く。麺は恐らくかなり茹でているのだろう、讃岐うどんとは正反対に全く腰がない。僕には食感が物足りなかった。★・・・・

僕には宗教心というものが殆ど無い。にも関わらず、数年前に訪れた伊勢神宮には感銘を受けた。高い木立の間の参道を静かに歩んでいくと、清々しい気持ちになり、徐々に期待が高まっていく。遂に本宮の前に立つと、茅葺屋根で覆われた建物の余りの簡素さに意表を突かれる。神を祀る場所が、豪華絢爛でなく、彩色も施さない質素な造りだという事実に一瞬困惑するが、程なくして、このような抽象性を選択した先人の洗練された感性に感服するようになった。

今回の旅行は、鳥羽に泊まりたい宿があったので企画したのだが、伊勢から鳥羽まではクルマで1時間程度なので、またあの感動を味わうべく、伊勢神宮にも足を運んだ。

参宮に足を踏み入れた瞬間から微かな違和感を覚えた。前回は観光客が少なかったので、静寂の中に砂利を踏みしめる足音のみが響いていたが、今回は観光客が多く話し声も聞こえてくる。参道を歩きながら、あまり精神が澄んで来なかった。本宮の前も観光客が多いのは同じ。参拝が2回目のせいもあるのか、前回ほどは感銘を受けなかった。


そういえば、前回は日が暮れる直前に到着したのだった。そのせいで観光客が少なかったのだろうか。ここは早朝や日没食前など人の少ない時に来るのが良いかもしれない。

★★★★・

前回伊勢を訪れた際は、到着が夕方だったので、「おかげ横丁」の店はほとんど閉まっていた。日本一の格式を誇る神社の前の商店は過度な商業主義に流れないのだな、と妙に感心したのを覚えている。

今回は伊勢神宮には14時前に着いたのだが、外宮と内宮の両方を廻ったので(前回は内宮のみ)、おかげ横丁の近くまで来た際は既に16時頃になっていた。手荷物を預けた駅の窓口が17時で閉まるので、早足で回らざるを得ない。

まったく捻りのない選択だが、前回食べられなかった赤福本店を訪れた。客の多さに驚く。畳の僅かに開いた空間に各人が自分の居場所をぎりぎりで確保しているので、落ち着いて食べる気がしない。味の方も、どこでも食べられる平均的なあんこ餅だった。せいぜい話の種にしかならないな。

★★・・・

御宿 The Earth

こんな場所に宿を作ろうと、良くも考えたものだ。「パールロード」から細い脇道へ逸れて、レンタカーで10分ほど走っただろうか。辺りに木々しかない中、そろそろ心細くなってきた頃に到着したこの宿は、熊野灘を望む崖の縁に建っている。”The Earthとは随分仰々しい名称だが、ここの屋上に立つと、納得してしまう。眼前に開けた海。視界を遮るものは、無い。少し早起きをし、朝日が海から昇るさまを生まれて初めて見た。この眺めのためだけに、この宿に再訪してもよい。

和食を基にしながら洋風の味わいも加えた料理も、満足の行くものだ。蒸してから焼いた黒鮑は、柔らかくも弾力のある見事な食感。肝を使ったソースとの相性も抜群。

メゾネット スイートは、リビングの上が吹き抜けとなっており、開放感がある。淡い色の木をあしらった調度品も落ち着いた感じだ。リネンが潤沢なのも嬉しい。客室には小さいながらも露天風呂が備わっており、海を眺めながらの朝風呂は格別だ。

★★★★★

伊勢志摩・鳥羽旅館|御宿The Earth【公式HP】

The Earthをチェックアウトし、近くの鳥羽展望台へ立ち寄る。The Earthからの眺めも良かったが、この展望台からの眺めは更に良い。地球が丸いということを実感できる。冬にもかかわらず、海の色が鮮やかだ。

★★★★★

伊良湖へ渡る伊勢湾フェリーの待ち時間が1時間ほど有ったので、暇潰しに側の鳥羽水族館へ寄った。水族館を訪れるのは何年ぶりだろうか。芸を見せるアシカやトドの器用さに驚く。水族館もたまには面白いものだ。

★★★★・

伊勢湾フェリー伊良湖側へ渡り、クルマで30分程の角上楼(かくじょうろう)という宿に泊まる。ここはかなり年季の入った旅館だ。入り口に火箸が有ったのには驚いた。

部屋は時流に合わせて改装しているみたいで、ベッドが置かれていたし、部屋食もダイニング テーブルで取る。ウォシュレットも備え付けてある。本館は木造建築のようで、防音性は悪い。泊まったのは1階だったが、2階で人が歩く足音が筒抜けだった。空調の調子が悪く、部屋はかなり寒かった。部屋に風呂が有るが、石の床が非常に冷たい。風呂用に暖房があったが、故障しているみたいだった。別館は見ていないが、快適性を求めるなら別館のほうが良いかもしれない。

角上楼はフグを売り物にしており、料理は中々良かった。とらふくの薄造りや炭火焼は絶品。フグを旨いと思ったのは初めてだ。女性用の少量のコースを頼んだが、それでも量はかなり多い。

部屋(本館):★★・・・

料理:★★★★・

愛知渥美半島伊良湖岬 和味の宿 角上楼(Kakujoro)公式HP | 昭和元年創業の純日本旅館 日本一の天然とらふぐの宿

角上楼の朝食は抜いて、代わりに弁当を作ってもらった。

クルマで2時間強の鳳来峡(ほうらいきょう)を散策する。ここは宇連川(うれがわ)の上流に切り立つ渓谷だ。湯谷温泉から三河槙原の間、約2kmに渡って、凝灰岩や流紋岩などの岩石が、浸食によって板敷状の岩盤を形成している。渓流のところどころで、滝や淵などが変化にとんだ景観を生んでいる。しかし、川沿いに散策路はなく、普通の車道(農道?) から川を眺めることになる。また、道と川の間は木が植わっているところが多く、景観が見にくい所が多い。わざわざ数時間かけて見に行くべきところかどうか、微妙な感じだ。

★★★・・

鳳来峡から豊橋駅までクルマで1時間強。新幹線で2時間ほどで品川に到着。