店は麻布の閑静な住宅街に在る。6人掛けのカウンターと個室が有り、我々の利用したカウンターはシックな雰囲気だ。カウンターは接客用で、シェフの厨房は別の場所に在る。
お任せのコースのみ。夜の2回転営業で、我々は20:45からの遅い回に臨んだ。カウンターの6人が同時に食べ始める。
1品目は、蟹に蟹味噌や雲丹を和えた冷菜。和風の優しい味わいだ。
2品目は、墨烏賊のフリットと蛤に雲丹を和えた温菜。雲丹が1品目と被っているが、フリットの食感は良い。
3品目は、本日最も印象に残った品だ。蒸した鮑の上に、鮑の肝で作ったソースが掛かっている。鮑の弾力感も、ソースの微かな苦味も素晴らしい。
4品目は、鯛の刺身と筍と青菜にトリュフを掛けたもの。あっさりとした品だ。
5品目はハンバーグだ。高級店としては若干捻り過ぎた印象を受ける。
6品目は、フォアグラを載せた大根のコンソメスープ仕立て。フォアグラは表面を香ばしく焼き上げており、大根は柔らかく煮てある。フォアグラの食感を活かしつつも、濃厚になり過ぎない優しい味わいだ。
7品目は、マナガツオとタコのソテー。素材も焼き加減も良い。
8品目の肉料理は、三種類から鹿を選んだ。付け合わせの無い禁欲的なプレゼンテーション。素材、焼き加減、ソースともに素晴らしい。分量がもう少しあれば、なお良かった。
9品目は、数の子やキャビアを和えた冷麺。日本的な「締め」の感覚だ。
最後のデセールは、三種類の中から苺とアイスクリームを選んだ。上に載っているトリュフは無くても良いと思うが、アイスクリームと苺は上品な味だ。
かなり和食に寄ったフランス料理で、この繊細さが人気の源だろう。量は少な目。ワインはペアリングで頼んだが、かなり古いミレジムも含めて、良いワインを出してくれる。6人の客に対して二人の給仕が付いたが、テーブル ウォッチも十分で、接客には好印象を抱く。皿出しは快調で、約2時間で食べ終わる。価格はかなり高いが、人気店で高級食材も多用するので、致し方ないか。
★★★★.