銀座四丁目交差点の銀座プレイス(旧日産ビル)の7階という素晴らしい立地だ。一つの階を、高級店の“Salon"とお手軽な”Dining"に区切っており、我々は“Salon"を利用した。”Salon"はやや小さめで、個室を含めても20席程度だろうか。白を基調とした天井の高いシックな内装だ。
ティエリー マルクス氏は、パリのマンダリン オリエンタル ホテルで自分の名を冠したレストランの料理長を務めており、銀座店はマルクス氏の腹心の部下だった日本人が料理長を任されている。
厨房の演出が面白い。客席との仕切りは全面ガラス張りで、オープン キッチンのような視覚的な面白さがありつつも、客席に音が漏れないようになっている。
コースは幾つか種類が有り、我々は品数の少ない“Menu MARX”を選び、ワインはペアリングにした。
“Amuse bouche / 始まりのひとさら“は、兎やホロホロ鳥を使った一口の料理や、海老で味付けしたグリッシーニ。分量は少ないながらも印象に残る味で、この後への期待が膨らむ。
“Semi pris de Coquillage / Caviar / 貝 / キャビア”はマルクス氏のスペシャリテ。生に近い貝とムースの食感の対比が良い。キャビアは、鶏肉のレバーに載せられており、こちらも素晴らしい。
“Risotto de Soja / Truffe noire / もやしリゾット / 黒トリュフ”もマルクス氏のスペシャリテ。微塵切りにしたもやしをスプマンテが覆い、その上にトリュフを載せている。もやし自体は淡白な味で、食感と香りを楽しむ皿だ。トリュフは、名ばかりで香りの乏しい店もあるが、この店のトリュフは香りが素晴らしい。
“Kue / Radis / 九絵(くえ) / 大根“は、ソテーしたクエと柔らかく煮た大根の組み合わせ。フランス料理店ながらも、魚の焼き方が見事だ。ソースが茶色がかっているが、着色しているのではなく、素材から取った出汁を煮詰めると自然にこういう色になるそうだ。
“Col-vert / Riz noir / 鹿児島 青首鴨 / 黒米“は、鴨の素材も焼き方もソースも最上だ。野趣と上品さのバランスが絶妙で、見た目は赤身ながらも火が通っている。
“Sweet BENTO / お重”は、三段重ねの食器にデセールが数種類載っている。デセールとミニャルディーズを同時に供したような感じであり、上品な甘さが好ましい。
僕はワインには疎いが、ペアリングはとても良かった。何気なくソムリエに「特別なグラス ワインは有りますか?」と訊いたら、「シャルム シャンベルタンのグラン クリュを空けちゃいましょうか?」という答えが返ってきて、少し焦ったものの頼んでみた。力強さの中に優美さが備わっており、満足した。もちろん追加料金であり、支払額はかなり膨らむが...
僕は少食なので品数の少ないコースを選んだが、楽に完食できた。食の太い人は、品数の多いコースにした方が良いだろう。
帰りがけに“Dining"の様子も見させてもらった。席数がかなり多く、完全なオープン キッチンで、活気がある。この日は寒かったので利用しなかったが、外のテラスからは和光の時計台が眺められる。暖かい日なら食後はテラスに移動するのも良いだろう。
立地、内装、料理、ワイン、接客の全てが高い水準にあり、高揚感に包まれて家路についた。
★★★★★