L’Embellirは西麻布の住宅街に在る。数年前までLe Souffleというスフレの名店が在った場所だ。店内の基調色はベージュと木の焦げ茶色だ。これだけだと地味になってしまうが、天井などに鏡を配して華やかさを付け加えている。アラカルトは無くコースのみだ。
アミューズブーシェ的な一皿目は、鶏の笹身に胡瓜を使ったソースを掛け、そこにキャビアを載せている。笹身は上質で、胡瓜との意外な組み合わせも良い。
続く皿は松茸だ。和食とは異なり、松茸を軽く揚げており、そこに木の子のソースを掛けている。松茸を揚げるというのは意外な調理法だが、食感がとても素晴らしい。
帆立貝は、火入れが若干深過ぎる気がするが、トマトを使ったソースの酸味と良く合っている。
オマール海老は、木の子と組み合わせてトリュフを掛けるという意外な調理法だが、木の子が素晴らしいし、トリュフも良く香っている。ほぼ全ての皿に、ソースをすくうためのスプーンが添えてあるが、ソースに自信があるのだろう。僕も全てのソースをすくって堪能した。
甘鯛は本日の白眉だった。東京のフランス料理店で甘鯛の鱗焼きを供する店は多いが、ここの甘鯛は、鱗のパリッとした感触が頭抜けている。甘鯛は焼くだけでなく、若干揚げているそうだが、この調理法も食感に寄与しているのだろう。毛蟹のソースも素晴らしい。
主菜の豚は、高級感を出すのは難しい食材だが、木の子をスプマンテ状にしたソースとトリュフで上質な仕上がりにしている。本日の料理は、様々な木の子をアクセントとして使っていることになる。
青リンゴのデセールは酸味が上品だ。
ペアリングもとても良い。
L’Embellirの料理は、和食の食材を多用し食感が軽いながらも、とても印象的だ。
コロナウィルス対策で席数を絞っているためかもしれないが、皿出しは軽快で、ストレスを感じずに食事を楽しめた。
素晴らしい店だと思う。
9/10