かつて麻布十番に「天冨良よこ田」という店が在った。過去形で書いたが、同じ名前の店は今でも在る。しかし2020年末に創業者が引退した際に経営権がチェーン店に売却され、現在その店に横田一族は関わっていない。僕は店を創業者の息子が継いだと勘違いし、去年(横田家が関わっていない)「天冨良よこ田」に訪れて、「味が大きく変わった」と驚いたものだ。しかし、息子さんが実は「天よこた」という別の店を開いていたと知り、この度訪れてみた。
場所は元の店の近く。店は6-7人掛けられる小さなカウンターのみ。一人で揚げているので、丁度いい広さだ。
最初に供された蛤の出汁が素晴らしく、その後への期待が高まる。
息子さんの揚げる天ぷらは、基本的には先代の味を忠実に受け継いでいる。精妙で極めて軽い揚げ方だ。蛍烏賊や鱒などの新作も有るものの、海老、烏賊、キス、穴子など正統的なネタが多い。時期的に山菜も幾つか有り、微かな苦味が心地良い。凝った一品料理や高級食材は無く、素朴な天ぷらだが、それがとても美味しい。
先代は接客に癖が合ったが(僕はそれも個性として受け止めていたが)、二代目は謙虚かつ適度に客と会話を交わすので、この接客は良いと思う。
ミシュランの評価に一喜一憂すべきではないかもしれないが、この店が開店一年でミシュランの一つ星を得たのは喜ばしい。ようやくクレジット カードが使えるようになったのも朗報。
9/10